栃煌山に期待!し烈な次期大関争い

 7月26日に千秋楽を迎えた大相撲名古屋場所(愛知県体育館)は、1998年以来となる17年ぶりの15日間連続満員御礼という大盛況のうちに幕を閉じた。新大関照ノ富士(伊勢ケ浜)のデビューという目玉商品が大きなセールスポイントだったが、終盤戦に入ると優勝争いのほかにも旭天鵬(友綱)と若の里(田子ノ浦)の2人の大ベテランが、土俵生命を賭けて奮闘するドラマチックな話題もあり大いに盛り上がった場所になった。

 幕内優勝は横綱白鵬(宮城野)が、千秋楽に1差で追う鶴竜(井筒部屋)との横綱決戦を制し、14勝1敗で2場所ぶり35回目のVで賜杯を奪還。5月の夏場所では土壇場でバタバタと星を落として力の衰えを指摘する意見もあったが、第一人者として他の力士とは格が違うところをあらためて示してみせた。

 意外だったのは照ノ富士の大関昇進で一番刺激を受けていた関脇逸ノ城(湊)の思わぬ不振だ。モンゴルから一緒の飛行機で来日、鳥取城北高の先輩でもある照ノ富士に遅れを取るわけにはいかないと、場所前から「2ケタ勝利を狙う」と公言していた。ところが、出だしから黒星が重なり一度も白星が先行することなく、結局4勝11敗と初土俵から10場所目で初めての大負けを喫してしまった。

 相手に押されると土俵際でほとんど残せずズルズルと後退、いなされると足がついていかずバッタリ。負けた相撲の内容も悪く、9日目には勝負が決まったあと白鵬からダメ押しまで食らった(これはもちろん白鵬が悪い)。9月の秋場所(東京・両国国技館)では平幕に転落することが確実で、大関取りは完全にゼロからのスタートとなる。

 代わって一気に浮上したのが関脇栃煌山(春日野)だ。明徳義塾高から実力者として知られ鳴り物入りで入門。順調に三役まで出世、12年5月場所では旭天鵬と優勝決定戦を争うなど、実績的にも申し分ない。だが、小さなケガがやや多いこと、それに白鵬に全く勝てないことが大きなネックとなっていた。ところが、序盤に稀勢の里らを破って波に乗ると、9日目に鶴竜、そして10日目には過去1勝28敗と全く歯が立たなかった白鵬にも勝って、横綱連破と大いに気を吐いた。

 惜しくも終盤5日間で4敗してしまい10勝5敗で終わったものの、文句なしで殊勲賞を獲得。これで大関昇進への土台は築いたといえる。1987(昭和62)年3月生まれの栃煌山は現在28歳5カ月。仮に秋、九州場所と連続で11~12勝すれば、28歳8カ月での昇進となりそう。ちなみに年6場所制になってからの大関昇進の高齢ベスト5は以下の通り。

(1)琴光喜 31歳3カ月

(2)2代目増位山 31歳2カ月

(3)霧島  30歳11カ月

(4)隆の里 29歳3カ月

(5)旭国  28歳11カ月

 30歳以上で昇進したケースもあるし、隆の里の場合はそこから大関在位9場所のあと、30歳を過ぎて横綱になっている。

 栃煌山は名古屋場所の時点で幕内在位はすでに50場所。07年3月の新入幕が20歳だったのでちょっと遠回りした印象はあるものの、これから大輪を咲かせる可能性は十分にある。もし、春日野部屋からの大関誕生となれば、1962(昭和37)年5月場所に栃ノ海、栃光が同時昇進して以来となる。かつてはサーカス相撲で上位キラーと恐れられた栃赤城が大関候補になり、現在の春日野親方、元関脇栃乃和歌も入門時から大きな期待をかけられた。

 栃乃和歌は1992(平成4)年3月場所、小結で12勝3敗の好成績を挙げて優勝争いを演じて、翌場所に大関昇進のチャンスを迎えた。しかし、場所前に足を負傷、強行出場したが無念の途中休場を余儀なくされ大関への野望がついえている。栃錦(第44代)、栃ノ海(第49代)という2人の横綱を輩出した名門から大関誕生となれば、大きな注目を集めるはず。また、栃煌山が大関候補のトップランナーに立ったことで、同期生の隠岐の海(八角)や同学年の妙義龍(境川)、さらに同部屋の栃ノ心あたりもライバル心を燃やしてくるだろう。

 もちろん逸ノ城の巻き返しも見逃せないし、高安(田子ノ浦)、遠藤(追手風)、大砂嵐(大嶽)も飛躍をもくろんでいる。そして、新十両の名古屋場所でいきなり優勝を決めた御嶽海(出羽海)の、さらなるステップアップもファンのお楽しみのひとつ。平成生まれの新世代のホープたちが、負けじと闘志を燃やしてくることは間違いない。大関レースの先陣を切るのは果たして誰なのか。ますます目が離せなくなりそうだ。

 (デイリースポーツ・北島稔大)

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