野獣復活、松本が金メダルを獲得

 「世界柔道選手権」(26日、カザフスタン・アスタナ)

 男女各1階級が行われ、女子57キロ級でロンドン五輪金メダルの松本薫(27)=ベネシード=が、決勝でロンドン五輪決勝と同じくコリナ・カプリイオリウ(ルーマニア)と対戦し、優勢勝ちして5年ぶり2度目の頂点に立った。男子73キロ級は一昨年覇者の大野将平(23)=旭化成=が、決勝で2連覇を狙った中矢力(ALSOK)に優勢勝ちし、2年ぶり2度目の優勝を飾った。世界選手権決勝での男子の日本勢対決は40年ぶり。日本勢は男子が今大会初の金メダルを獲得した。

 右足を大きく前に出した低い姿勢。野性味あふれる表情。松本が本来の姿で闘い、女王の座を取り戻した。「私の中では優勝が当たり前。今回は当たり前に勝てた」。強気なセリフもどんどん飛び出した。

 初戦から3試合連続一本勝ちし、攻め続けた。最後はロンドン五輪決勝と同じカプリイオリウ戦。何かをつぶやき、すさまじい形相で入場した。鋭い視線と超攻撃的スタイルで定着した「野獣」の異名そのもの。世界ランク1位の強豪を攻め立て、1分20秒すぎに右小外刈りで技あり。完勝だった。

 ロンドン五輪で日本柔道唯一の金メダルを獲得。脚光を浴びた一方で重圧も尋常でなく、2回戦敗退の昨年は胃薬を飲んで畳に上がった。「負けは許されない」との焦りから、試合中に「なぜ勝ちたいのか。なぜ柔道をしているのか」と迷うほどだった。

 吹っ切れたのは7月の国際大会での3位決定戦。先に投げられて本能に火が付き、相手を追い回して抑え込んだ。「自分でプレッシャーをつくっていた。荷物は背負ってなかったんだ」-

 栄光の後の屈辱をバネに原点回帰した。「全ての試合で一番高い場所に立つ。目の前の敵だけを見て闘う」。次なる目標は五輪2連覇しかない。

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