野村 豪快に散った…40歳「体の限界」
「全日本実業柔道個人選手権」(29日、ベイコム総合体育館)
男子60キロ級で五輪3連覇を果たし、24日に現役引退を表明した野村忠宏(40)=ミキハウス=が現役最後の大会に出場し、1、2回戦は一本勝ちしたが、3回戦で一本負けした。昨年の倍以上となる3000人の観衆が詰めかけ、会場からは大きな拍手が送られた。引退の理由に「体の限界」を挙げた野村は、31日に大阪市内で会見を開く。
畳の上に横たわった野村は静かに天を仰いだ。意を決したように起き上がると深々と礼。3回戦は開始26秒、腰車で一本負け。涙は見せない。柔道界をけん引してきたレジェンドは、拍手を浴びながら華々しく散った。
最後まで野村の柔道だった。2年ぶりの実戦にもかかわらず、開始10秒で一本背負いを繰り出した1回戦。背負い投げで一本勝ちした2回戦。そして最後は一本負けした。
「豪快に勝って、豪快に負けて。負けても勝っても一本柔道。そういう自分の柔道人生だったのかな」。柔道とともに歩んできた37年間。代名詞であり「自分をチャンピオンまで導いてくれた宝物」の担ぎ技を繰り出した。
どんなときも「もっとうまくなりたい」と努力を重ねてきた男が、現役引退を決めた理由は一つ。「自分が納得のいく柔道が、自分には期待できない。心が燃え尽きたり、妥協が入ったり、逃げたんじゃなくて、長年酷使した体の限界」。だからこそ、「もっともっとやりたい」と無念の言葉も口にした。
「柔道に対する思いが燃え尽きることは永遠にない。よう頑張った。そういう言葉をかけてあげてもいいのかな」。勝負師の鋭い目は、少しだけ潤んでいた。