桐生「当たり前」復帰戦V 復活のろし
「陸上・日本学生対校選手権」(12日、長居陸上競技場)
男子100メートル決勝が行われ、右太もも裏の故障から約4カ月ぶりの復帰戦となった桐生祥秀(19)=東洋大=が、10秒19(追い風0・5メートル)で優勝を飾った。中盤から一気の伸びで世界選手権のリレー代表だった大瀬戸一馬、長田拓也(ともに法大)、4月の織田記念陸上で敗れたケンブリッジ飛鳥(日大)らを撃破。16年リオデジャネイロ五輪に向けて、復活ののろしを上げた。
ここでは役者が違う。男子100メートル決勝、桐生はトップのリアクションタイムで好スタートを切ると、中盤から一気の伸びで世界選手権出場組の大瀬戸、長田を突き放した。10秒19は、公認タイムでは今季自己ベスト。「優勝は当たり前と思ってた。日本で負けていたら、世界で戦えない」。現役日本最速スプリンターの意地とプライドが、言葉の節々ににじみ出た。
スパイクを履いての本格的な練習を始めたのは、わずか1週間前。それでも、「日本の学生の大会。優勝は最低条件だと思ってた」と、勝利を自分自身に義務づけていた。
出場できなかった今夏の世界選手権。何よりも刺激になったのが、男子100メートルで銅メダルを獲得した同学年のブロメル(米国)の存在だ。昨年まで世界ジュニアなどでしのぎを削った相手が、世界最高峰の舞台でメダルを獲得した。「あれが一番刺激になった。まだ若いとか言ってられない。そんなことを言ってる間に世界はまた速くなる」。ライバルの走りが、桐生の心に再び火をつけた。
10月は和歌山国体で滋賀県代表としてリレーに出場予定。シーズン終盤だが、来年のリオ五輪イヤーに向け、どん欲に進化を求めていく。「(10秒)19なんかじゃ復活とはいえない。でもきっかけになった。まだまだ上げていける」。五輪、9秒台、そして世界へ、“ワンダーボーイ”が再び加速する。