鶴竜が綱初V「ひとつ自信になった」

 「大相撲秋場所・千秋楽」(27日、両国国技館)

 横綱鶴竜は、大関照ノ富士に本割で寄り切られたものの、12勝3敗で並んだ優勝決定戦を上手出し投げで制し、9場所ぶり2回目の優勝を果たした。14年5月に横綱昇進後は初V。豪栄道は稀勢の里との大関対決で寄り切られて7勝8敗と負け越し。九州場所は2度目のかど番となる。

 横綱のプライドと責任が、待ちに待った優勝を引き寄せた。優勝決定戦、鶴竜は低く当たって左前みつをつかむと、間髪入れずに上手出し投げで照ノ富士の巨体を土俵にはわせた。

 横綱昇進から9場所目。11日目の栃煌山戦、14日目の稀勢の里戦は2回、立ち合いの変化を敢行した。悩み苦しんだ末につかんだ賜杯に「この瞬間のためにずっとやってきたんで。良かったと思う」と、湧き上がる喜びをかみしめた。

 14年春場所で初優勝して最高位を極めたものの、その後は不本意な成績が続いた。今年3月からは左肩の負傷で連続休場。逸ノ城が躍進、照ノ富士は大関になり新しい力が急成長して、存在感は薄れつつあった。

 それでも復活の日を信じて、稽古を続けリハビリに耐えた。「腐らずに頑張ってきた。励み?家族じゃないですかね」。ムンフザヤ夫人と、5月末に誕生した長女アニルランちゃんに感謝。表彰式後には右手に賜杯、左手に愛娘を抱いて最高の笑顔を見せた。

 愛弟子に優勝旗を手渡した師匠の井筒親方(元関脇逆鉾)も感慨深げ。審判長として土俵下から目を光らせたが、本割で右四つから寄り切られた瞬間は、「心臓がおかしくなった」と、心中穏やかではなかった。それだけに決定戦を制してのVに「悲願でしたからね。天が味方してくれた。感謝です」と、10日目で2差をつけられてからの逆転優勝に目を細めた。

 「これでひとつ自信になった」と鶴竜。さらに充実して、大相撲界を引っ張っていく。

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