女子柔道 近藤亜美が大会3連覇
「柔道・グランドスラム東京」(4日、東京体育館)
リオデジャネイロ五輪代表選考の一つとなる大会が開幕し、男女計5階級が行われた。し烈な代表争いを繰り広げる女子48キロ級は昨年と同カードの決勝で、近藤亜美(20)=三井住友海上=が浅見八瑠奈(27)=コマツ=に一本勝ちし、大会3連覇を飾った。
元世界女王の近藤が、大一番で真価を発揮し、一本勝ちで見事な復活を果たした。リオ五輪代表を激しく争う浅見との決勝。大外刈りで技ありを奪うと、そのままけさ固めで勝負を決し、左拳で畳をたたいて、立ち上がって右腕を強く振った。一礼すると、とめどなくあふれる涙を袖でぬぐうと、今度は満面の笑みで、感情を爆発させた。
終盤、一時劣勢に回ったが「リードされてたんですけどあきらめるつもりはなかった。いくら後れを取っても、最後まで一本柔道を貫こうと思った」と自分を信じ抜いた。ここぞの場面で「完璧に準備をしてきた」と、この日のための対策を生かした。
近藤がこれまでの柔道人生で、ターニングポイントに挙げたのが、初優勝を飾り、第一線に躍り出た13年のグランドスラム東京だった。当時高校3年で「むっちゃ楽しかった。それまで見学組だったから」と、観客席から主役に立ち位置を変え、そのままの勢いで14年に一気に世界女王に上りつめた。
あれから2年。今年は一度も表彰台の頂点に届かず、苦しみ抜いたが、この日の結果が、全て成長の過程だったことを示していた。久しぶりの金メダルに「今年1個目なんで」と、どこか懐かしそうに、しみじみと語った。
世界女王の証しだった赤ゼッケンが外れて、追われる立場から、追う立場に戻ると、その重圧からも解放された。「(赤は)1トンぐらいに感じた。今は50グラム」と例え、心身ともに軽快な柔道スタイルも取り戻した。
悩み抜いた1年のラストに視界がぱっと晴れた。視線の先には、子どものころに夢見た五輪の舞台がくっきりと現れた。五輪優勝者はゴールドゼッケンをつけることになるが「いつかはきっと、リオか東京で。多分300トンくらいに感じるんだろうな」と、自らの姿を想像して、うれしそうにまた、笑った。