覚醒した174センチの卓球美少女
石川佳純(157センチ)。福原愛(155センチ)。伊藤美誠(153センチ)。卓球女子・リオデジャネイロ五輪代表候補に内定している3人を頭一つ高いところから見下ろすニューヒロインが、1月11~17日に行われた全日本選手権で覚醒を予感させた。
ジュニアの部・女子シングルスで、初優勝を飾った浜本由惟(17)=エリートアカデミー。身長174センチからフォアハンド、バックハンドを巧みに操る未来のエース候補は、小学生時代にモデル経験もある美少女アスリート。一般の部でも初めて8強入りし、実力の片りんを見せつけた。
おとなしくて引っ込み思案な自身の殻を破った。ジュニア決勝のカットマンとの1時間を超える大熱戦は最終ゲームに突入。競った場面でのエッジボールで微妙な判定を受けた。「私生活でも言いたいことが言えなかったり、ズルズル引きずっちゃう」という浜本は、「3年前の決勝でも同じことがあって、その時は抗議せずに負けて後悔した。ダメでも自分の思ったことを言おう」と意を決して抗議。覆りはしなかったが、全身からほとばしる勝利に対する執念を初優勝に結びつけた。
同じエリートアカデミーの平野美宇らを抑えて頂点に立ち、「今まで2位、3位、16強、32強ばかりで、優勝はなかったのでうれしい」と笑顔がはじけた。日本代表女子の村上監督は「接戦をよくものにした。(審判に抗議した直後は)空振りをしてたけど(笑)。それでも、あそこからよく持ち直して勝てた」と成長に目を細めた。
才能開花の裏には新コーチの存在があった。昨年10月から指導する女性コーチの劉潔さんは「もともと力はあるのに性格が引っ込み思案で、最初はとにかく自信がなかった」と技術指導よりも性格にメスを入れることに腐心したと明かす。「とにかく毎日合う度に褒めました。プレーだけでなく、女の子なので『そのヘアゴムかわいいね』とか。そうするとプレーにも自信が出てきた」と、女性ならではの気遣いで信頼関係を築いた。
最初に効果が表れたのが昨年12月。世界選手権団体戦(2月28日開幕、クアラルンプール)の代表選考会だった。浜本はライバルたちを次々と撃破。決勝でも実力者の森薗美咲を破って優勝し、世界切符をものにした。
急成長を遂げるニューヒロインは「コーチは心の支えになっている。『競ったときは一から』とアドバイスをくれる。今でも自分に自信はないですけど、いいコーチがついていることが自信かな(笑)」。照れを隠すように手のひらを頬に添えた。
世界女王の丁寧(中国)の171センチを超える身長はまだ伸びているという。初の世界選手権出場を経て、20年東京五輪代表争いに向けても台風の目となりそうだ。(デイリースポーツ・藤川資野)