田中智美リベンジ1秒差で2位リオ当確
「名古屋ウィメンズマラソン」(13日、ナゴヤドーム発着)
リオデジャネイロ五輪代表選考会を兼ねて行われ、し烈な日本人トップ争いを制した田中智美(28)=第一生命=が2時間23分19秒で2位となり、初の五輪代表に“当確”ランプをともした。昨年の世界選手権代表選考での不遇の落選を乗り越え、夢舞台への切符をほぼ手中にした。初マラソンの小原怜(25)=天満屋=が、1秒差の3位。ユニスジェプキルイ・キルワ(バーレーン)が2時間22分40秒で連覇を達成した。男女マラソン代表は、17日に発表される。
歯を食いしばって前に出た。36・8キロからの小原とのマッチレース。田中はゴールのナゴヤドーム手前で前に出ると、そのまま小原を振り切り、両手を広げてゴールに飛び込んだ。果敢に仕掛け続けてきた154センチ、39キロの体は、もう限界を超えていた。それでも夢舞台への思いが、応援してくれる人たちへの感謝の気持ちが、わずか“1秒差”を削りだした。
「誰より自分がリオへ行きたい気持ちが強いんだと思って走った」-。瞳を潤ませるバルセロナ五輪代表の山下佐知子監督(51)を見ると、もう我慢できなかった。顔を覆い、思いっきり泣いた。
昨年の世界選手権の選考。14年11月の横浜国際で選考会唯一の優勝を果たしながら、レースの消極性を指摘され落選した。「ショックだった」。ただ、自分よりも怒ってくれる人たちが周りにいた。「私は絶対に許さない」-。山下監督はそう言って陸連にかみついてくれた。そして、この1年間、チームは田中のために最大限のバックアップ体制を敷いてくれた。当時の田中を、母・きみ子さん(56)は「自分みたいな選手のために周りが応援してくれてると分かって、奮起したみたい」と振り返る。
ペースメーカーが外れた30キロ過ぎ。昨年の北京世界選手権銅メダルのキルワのスパートにただ一人食い下がった。「誰もが納得する力をつけるしかないんだよ」という監督の言葉を思い返しながら、必死に腕を振った。すべてはみんなの思いに応えたかったから。
1年前、リオ五輪への覚悟を決めた時、大好きなビールを断った。「今日は一番おいしいビールが飲めると思います」。後悔のない完全燃焼のレースができた。だから胸を張って、笑顔で言った。「リオは決まったと思っています」-。誰にも文句は言わせない。