稀勢の里は来場所で横綱になれるか

 大相撲春場所で大関稀勢の里が自己最多に並ぶ13勝を挙げ、14勝で優勝した横綱白鵬に白星1つの差で準優勝した。横綱審議委員会(横審)の内規では、横綱に推挙する力士について、大関で2場所連続優勝かまたはそれに準ずる成績を挙げた力士とあるが、場所後の横審では稀勢の里の夏場所(5月8日初日、東京・両国国技館)での綱とりについて、話題はまったく出なかった。

 13番勝ったとはいえ、白鵬、日馬富士の両横綱に喫した2敗が、あまりにも一方的な負け方だったことがマイナス要因で、八角理事長(元横綱北勝海)は「13勝は大きい。立派だと思う」と評価した上で「ただ、横綱との2番がね。それに初優勝していない」と綱とりムードに至らなかった理由を示唆した。

 とはいえ、来場所綱とりの可能性が完全にゼロになったわけではない。八角理事長は「もともと実力がある。来場所で内容、結果ともに相当いい雰囲気が出てくれば。(特に)白鵬戦で頑張ることが必要」と例えば15戦全勝優勝とか、白鵬を圧倒して14勝優勝でもすれば、即横綱昇進の話が出る可能性は否定しなかった。

 背景には稀勢の里の安定した成績への評価がある。2012年初場所の大関昇進以来在位26場所で271勝119敗。1場所平均10勝以上の高い安定感を誇っている。この間にかど番はわずか1度。3場所で13勝をマークした。

 日本相撲協会理事を長く務めた友綱親方(元関脇魁輝)も「来場所14勝1敗で優勝したら、昇進の話が出てくるかもしれない。大関になってからこれまで一番安定した成績を残してきたのだから、それが加味されることはあるだろう」と和製横綱誕生への期待を込めて言う。

 これらの話を総合すると、簡単に言えば、稀勢の里が来場所で日本中がびっくるするような活躍を見せれば、即昇進の突破口が開けるということになる。では、そのために、稀勢の里が心しないといけないこととは何か。本人に代わり、八角理事長がこう代弁した。

 「綱とりへの課題は横綱との立ち合いだろうね。相手はタイミングをずらしたり、じらしたりといろいろやってくる。そこで焦ったり、緊張したらいけない。あとは当たってから自分の形で取ること。先場所は左おっつけから左四つに組む形に安定感が出てきた。それを完成させること。最後に大事な時に力を出せる精神面だね」

 先場所は大関琴奨菊が綱とりに失敗した。ならば次は元祖横綱候補の稀勢の里。常に真剣に勝負と向き合う真摯な姿勢に共感を覚えるファンは数え切れない。可能性があるのならば、それがゼロになるまであきらめないでほしい。そして、先場所とは比較にならないような、日本中をあっと言わせる大活躍を見せてほしい。(デイリースポーツ・松本一之)

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