ボート日本代表・中野、リオへ思い新た
ボートのリオデジャネイロ五輪アジア・オセアニア予選の男女軽量級ダブルスカルで五輪出場枠を獲得した日本代表が26日、大会が行われた韓国・忠州から羽田空港へ帰国した。昨年10月にNTT東日本を退社して五輪出場を目指した中野紘志(28)=新日鉄住金=は、五輪本番での代表入りとメダル獲得へ気持ちを新たにした。
難関大から大企業という約束された未来をなげうってまで五輪に懸けた思いが実現するまで、あと一歩のところまでこぎつけた。中野は「税関申告書の職業欄に『漕手』と書いて帰ってこられたので、オリンピックという結果がついてきたのはうれしい」と、充実感をにじませた。
初めてオリンピックを意識したのは1998年長野五輪でスピードスケートの清水宏保さんを見てからだという。当時やっていた水泳では才能の差を痛感したが、一橋大入学後に始めたボートで「もうちょっと、もうちょっとの延長でここまで来た」と、五輪が手の届くところまでたどり着いた。
五輪を目指し、昨年10月にはNTT東日本を退社。ハローワークにも通ったが「お金はなくなったけれど、優しい人がこんなにいたんだと思った」と悲観的になることはなかった。4月からは茨城県にスポーツ専門員として採用された。
今後は5月の強化合宿で中野を含めた3人の候補から2人が五輪代表となる。「いろいろな人に迷惑をかけた分の心配料、不安料も返したい」。ボート史上初のメダル獲得へ、マメだらけの手でオールを握り続ける。