セーリング・吉岡、雲の上の「アモーレ」吉田とメダル取る

 セーリング女子470級の吉岡美帆(25)にとって、パートナーの吉田愛(35)は雲の上の存在だった。10歳年上で3度目の五輪。キャリアのまったく違う憧れの人に自らラブコールを送り、コンビを結成したのが3年前。今では意見を戦わせるまでに成長した若きセーラーは「メダルは手の届くところにある」と言いきった。

 思いを募らせて実った恋だ。連絡先を交換して1カ月。「愛さんからの連絡を待っていたけど来なくて、テスト勉強が手につかなくなってしまった」。勇気を振り絞って吉岡が送ったメールは「一度一緒にヨットに乗ってみませんか」。2013年春。年齢もキャリアもまったく違うペアが動きだした。

 立命大卒業と同時にヨットをやめるつもりだったが、4年のインカレで完全燃焼できなかった。その頃にトップ選手の練習会に呼ばれ、吉田と出会った。

 吉田は旧姓の「近藤」で世界ランキング1位として北京五輪に出場。鎌田奈緒子との「コンカマ」として注目された。ロンドンは別ペアで出場。リオを目指して新パートナーを探していた。若手にとっては雲の上の存在。しかし「チャンスだと思った」と自ら動いた思い切りの良さがベテランの心を動かした。

 かじ取りとメーンセールの操作を担当するスキッパーが吉田。艇のバランスを取り、状況判断するクルーを吉岡が担う。「海の上では同等。意見が食い違えば言い合いになることも」と吉岡は言う。昨年7月、代表選考大会(デンマーク)は逆転で代表切符をつかんだ。海岸を散歩しながら激論を交わした作戦がピタリとはまった。

 「楽しみたい」と始めたヨットは「愛さんと組んで視点が変わった。大きい目標に到達する前の小さい目標を自分できちんと見るようになった」と吉岡。「私は妥協を許さない」という吉田は「東京もその先もずっとヨットをしてほしいと思って育てた」と言う。

 世界ランキングは5位。「メダルは狙える位置にいる。もう少しで手が届く」と吉岡。競技会場となるグアナバラ湾内は風も強く潮の流れも複雑だが、雲の上の人とともに立つ表彰台を目指し、その荒波に立ち向かう。

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