稀勢の里、綱遠のく重い3敗目 日馬に完敗「クソーッ」力ないため息
「大相撲名古屋場所・13日目」(22日、愛知県体育館)
大関稀勢の里が横綱日馬富士との2敗対決に寄り倒しで完敗し、今場所の綱とりは厳しい状況に追い込まれた。日馬富士は2敗を死守し、単独トップに立った。3敗は白鵬、稀勢の里、平幕貴ノ岩の3人。十両宇良は朝弁慶を寄り切って9勝目を挙げた。
ため息をつきながら、稀勢の里は悔しさ、無念の思いを吐き出した。重い、重い黒星を引きずりながら戻った支度部屋で「クソーッ」。小さく、短い言葉が行き場を失って宙を舞った。
立ち合い、頭で当たってきた日馬富士に左を差され、右前みつを引かれた。自分の左も入ってはいたものの、相手に完全に封じられていた。半身で耐えながら、逆転を狙い、命綱の左を抜いて、肩越しに上手を取りにいった。これが相手を呼び込む形になり、一気に寄り倒された。
崩れる予兆はあった。今場所は初日から控えでほほ笑むなど、平常心を保つ工夫をしてきた。それが10日目に松鳳山の変化に屈して以降は余裕を失った。この日は控えに座った後、しきりにまばたきをした。これは稀勢の里が極度に緊張した時に見せる癖で、勝負どころでメンタルの弱さが顔を出した格好だ。報道陣から「重い1敗では?」と問われると、押し黙ったまま目線を下げた。
13日目にして早くも3敗を喫し、日馬富士に1差をつけられた。八角理事長(元横綱北勝海)は「優勝の行方は3敗まで分からない。稀勢の里は明日が重要。(綱とりは)今はどうこう言えない」と慎重に言葉を選んだが、逆転で昇進最低条件の初優勝を達成するには、まずは残りの白鵬、豪栄道戦を制することが先決。綱へのイバラの道はまだ続く。