萩野が先陣メダルラッシュの予感 五輪コラム
沸き立つ高揚感、ひりひりする緊張感、そしてやり遂げた達成感。リオデジャネイロ五輪は競技が本格的に始まった第2日から、五輪でしか味わえないスポーツ最高峰の魅力が満載だった。そんな雰囲気の中で、競泳男子400メートル個人メドレーで萩野公介が金メダル、瀬戸大也が銅メダル。重量挙げ女子48キロ級の三宅宏実と柔道男女でも銅メダルと、日本のメダル量産を予感させる好スタートとなった。
▽王者の泳ぎ 萩野は「王者の泳ぎ」だった。優勝候補筆頭に推されて臨む競泳最初の決勝種目。重圧が幾重にも覆っていた。それでもスタートから大きな泳ぎ、落ち着いたストロークに崩れはなかった。先行する瀬戸をプラン通りに2種目目の背泳ぎでかわし、リードを広げる。3種目目の平泳ぎから追い上げてきたケイリシュをゴール前のひと伸びで突き放す力強さもあった。万能スイマー萩野が最大の目標にしていた種目で、日本新記録を更新しての完勝だった。 けがで五輪前年を棒に振る大きな挫折を味わった。その間に瀬戸は世界選手権で2連覇の偉業を達成。悔しさを糧に一回り成長した萩野は、「大也が前半から行くだろう。それに負けないように行かないと勝てないと思った。最後は競り勝てた」。揺るぎのないレース同様に冷静な口調には第1人者の風格さえあった。 「水泳ニッポン」と呼ばれていた時代には何度もあった競泳の同一種目での日本勢複数メダルは、1956年メルボルン五輪男子200メートル平泳ぎ以来、60年ぶりの快挙だ。それでも銅メダルの瀬戸は「4年後の東京では、今回実現できなかったワンツー・フィニュシュして、公介に勝ちたい」。ともに1994年生まれの萩野と瀬戸。宿命のライバル物語は、20年東京五輪まで続く。 ▽五輪の怖さ 「魔物がすむ」といわれる五輪の怖さも各競技で実感できた。 腰痛と闘いながらの重量挙げ、三宅は、あと一歩で「記録なし」、「メダルなし」の二度の危機を乗り越えた。スナッチは、銀メダルを獲得したロンドン五輪より6キロも少ない81キロを2回失敗。しかし最後の3回目に「不思議と無心になれた」と、際どく挙げた。107キロを挙げれば銅メダルのジャークも最後の試技までもつれた。「3位と4位では全然違う」。メダルの重みを知り尽くしたベテランの価値ある2大会連続表彰台だった。 柔道男子60キロ級の高藤直寿は準々決勝の素早い攻防の中で帯をつかまれての隅返しに悪夢の一本負け。女子48キロ級の近藤亜美も準決勝の立ち上がりで低い位置からの袖釣り込み腰で技ありを奪われて敗れた。いずれも3位決定戦に回って銅メダルは確保したが、ともに納得できる色のメダルではない。「魔物」に一瞬のスキをつかれた二人だが、高藤23歳、近藤21歳とまだ若い。いずれも4年後の雪辱を誓った。(荻田則夫)