演技順も味方に「金」 「五輪コラム」

体操の男子団体総合で日本が2004年アテネ以来、3大会ぶりの金メダルを獲得した。08年北京、12年ロンドンと中国に敗れて銀メダル。雪辱を期した今回は予選で4位と不安を抱かせたが、決勝では5種目目にトップに立ち、最終種目でロシア、中国を突き放す逆転勝ち。一人のミスが大きく全体を左右する現行の競技方法や、演技順も味方につけた会心の勝利だった。

 ▽少数精鋭の緊迫戦

 1960年ローマ大会から五輪5連覇した「体操ニッポン」全盛時代の団体戦は、各種目とも6人が演技して上位5人の得点を合算していく試合方式だった。1人の大きなミスは得点から除外する安全弁があった。だが、各チーム6人ずつの演技で競技時間がかかりすぎ、ミスの救済策で緊迫感もそぐ欠点があった。

 五輪ではその後、テレビ向けの分かりやすさが重視されるようになり、さまざまな競技で試合方式の変更が相次いだ。1試合に3時間、4時間もかかる長時間競技は相次いで時間短縮を求められた。バレーボールはラリーポイント制になって時間短縮を果たし、体操の男子団体総合は1チーム5人で各種目を3人ずつが演技する方式になり、競技時間が2時間半ほどに収まるようになった。予選の採用で決勝は上位8チームによる少数精鋭の戦いとなり、全体の緊迫感も高まった。

 ▽最終種目に得意の床

 体操男子の正式な演技順は床運動、あん馬、つり輪、跳馬、平行棒、鉄棒。予選の上位2チームが床運動から開始できるが、予選4位の日本は1種目ずれたあん馬からのスタートとなった。結果的には、この演技順も日本に大きくプラスに作用した。

 あん馬は日本の苦手な種目。案の定、山室光史が落下する失敗で13点台。日本は苦しい出だしだった。しかし、つり輪、跳馬、平行棒と進む中で日本に再度の目立った失敗はなく、安定した演技を続けた。ライバル中国は最初の床運動のほか、跳馬などでもミスが重なり得点が伸びなかった。5種目目の鉄棒を終えた時点で日本226・895点、ロシア226・687点、中国226・156点

と小差ながら日本が初めて首位に立った。

 日本の最終種目は床運動。落下などの致命的なミスの出にくい種目で、土壇場の競り合いに臨むメンタル面でも優位に立てた。先頭の白井健三が16・133点の高得点をマークした時点で日本の優勝はほぼ確定したといえる。続く加藤凌平、エース内村航平も15点台中盤をマークし、終わってみれば2位以下に2点以上の大差がついた。

 技の難度を上げたうえで、美しく、ミスの少ない総合力で得点を上乗せできることが王座に就く条件だった。悲願を達成した内村は金メダルを「努力してきた成果」と誇った。どこにも負けない技術、練度に加え、競技ルールにも巧みに対応して「体操ニッポン」が再び頂点に立った。(荻田則夫)

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