東京のエースに名乗り 「五輪コラム」
メダル量産の日本選手団で若い選手の活躍が目立っている。競泳でリレーを含めて金、銀、銅各1個の萩野公介、柔道男子90キロ級金のベイカー茉秋は21歳。20代前半のメダリストも続々と誕生し、2020年東京五輪でも主力として期待される選手たちが貴重な経験を積んでいる。
▽新技に成功、銅メダル「体操ニッポン」の19歳、白井健三は団体金メダルに次いで種目別の跳馬で銅メダルを獲得し、次世代エースとしての自信を深めた。
白井の魅力は独創性と決断力だ。「技のデパート」と言われるほど次々と難度の高い独自の技を開発してきた。跳馬の種目別決勝では1本目に新技「伸身ユルチェンコ3回半ひねり」に挑んだ。後ろ向きに跳び、体を伸ばした伸身姿勢で3回半ひねって前向きに降りる。着地で左足が流れただけでほぼ完璧な演技だ。「シライ」の名を冠した5個目の新技として認定されることになる。
種目別の跳馬は異なる技を2本跳んで、その平均点が得点となる。新技を成功させた1本目の15・833点は決勝進出8人の計16本中の最高得点だ。2本目は難度の低い技で、着地で両足が一歩前に出た。15・066点にとどまり、2本平均で15・449点。難度の高い技を2本そろえた北朝鮮、ロシア選手に及ばなかったが、1本目の高得点で銅メダルを引き寄せた。
「10代最後の試合だったので気持ちよく、決勝で(新技を)やるつもりだった。五輪は4年後までないので、転倒があっても悔いはないと思っていた」
一流の演技者に不可欠の自らをアピールする意欲にあふれ、挑戦する勇気もある。跳躍系のスペシャリストとして床運動と跳馬で実績を残してきたが、今後は個人総合2連覇の内村航平に続くオールラウンダーへの成長が求められる。初めての五輪を終えた白井は「まだ伸びしろがある。自分の将来が楽しみ。(内村)航平さんの後継者になれるよう頑張りたい」と東京五輪を見据えた。
▽「4年後には勝つ」白井と同様に、若いメダリストたちは既に4年後に視点を切り替えている。競泳のエース萩野は「東京五輪に向けて、もっと強くなりたい」とどん欲で、柔道男子73キロ級を制した24歳の大野将平は「4年後、東京で開催されるので目指さないわけにはいかない。柔道界のシンボルになりたい」と目標は壮大だ。
競泳男子200メートルバタフライで「水の怪物」マイケル・フェルプス(米国)にわずか0秒04の小差で敗れて銀メダルの坂井聖人は「悔しい形で終わったが、東京五輪では優勝したい」。400メートル個人メドレー3位の瀬戸大也は「東京では(萩野)公介に勝ちたい」と、雪辱を期す。レスリング男子グレコローマン59キロ級2位、太田忍のように「銀ではまだまだという気持ち。日本に帰ってまたしっかりと練習する」と今回のメダルに満足していない選手も多い。
「東京五輪世代」がリオでたくましくなった。(荻田則夫)