五輪追加種目ヒロインたちの真の戦い 「“あんな人いたな”で終わりたくない」
8月4日、リオデジャネイロ五輪の前に行われた国際オリンピック委員会(IOC)総会において、2020年東京五輪の追加種目5競技18種目が決定した。採用された5競技は野球・ソフトボール、空手、スポーツクライミング、サーフィン、スケートボード。現状、実施は1大会にのみに限られるが、約2年に渡って追加種目入りへ活動してきた各競技団体の関係者にとっては、大きな喜びに包まれた1日となった。
ただ、喜んでばかりもいられないのが、その4年後を目指す選手たちだ。各競技とも追加種目入りへ、トップ選手たちがPRなどに積極的に参加してきた。空手の13年ワールドゲームズ女子68キロ超級金メダリストの植草歩(24)=高栄警備保障=もその1人。愛くるしい笑顔で“空手界のきゃりーぱみゅぱみゅ”の愛称がついた24歳は、空手連盟のイベントやテレビ出演などで空手の認知度アップに大きく貢献してきた。
追加種目入り後は、五輪種目の選手として、リオ五輪で活躍した選手たちとの共演も増えた。「すごく五輪の力を感じます。みんな意識が高いし、刺激になる。これまでの空手家としてだけでなく、アスリートとして意識を高めていかないといけない」と、気持ちを引き締めている。
追加種目入りが決まったことで、若い世代が五輪出場を目指し、本気で取り組んでくるのは間違いない。それでも「高校生や大学生でも勢いのある選手がいる。負けていられない。五輪に入れるために動いていた人で終わりたくない。“あんな人いたな”で終わりたくない」と、キッパリ。10月世界選手権(オーストリア)では悲願の初優勝を狙う。
スポーツクライミングは、9月に世界選手権が行われ、ボルダリング男子では楢崎智亜(20)=栃木県連盟=が日本人初の金メダルを獲得。ボルダリング女子では野中生萌(19)=東京都連盟=が銀メダル、野口啓代(27)=茨城県連盟=が銅メダルを獲得するなど奮闘した。
特に野口は4度のW杯総合優勝を誇る日本女子クライミングの第一人者として、競技入りの活動の先頭に立ってきた。現在、27歳。活動していく中で、自分自身が4年後を目指すかどうかについては悩んだという。「あと4年、アスリートとしてやっていくかどうか、覚悟を決めるのに時間が掛かりました」。それでも最後はアスリートとしての挑戦心が勝った。「やっていくと決めた以上は金メダルを目指して全力で取り組んでいきたい」-。
これまで夢でしかなかった舞台を目指す、ヒロインたちの真の戦いが始まった。(デイリースポーツ・大上謙吾)