五輪ボート会場見直し問題、宮城県知事と組織委かみ合わず
20年東京五輪・パラリンピックのボート、カヌー・スプリント会場「海の森水上競技場」(東京都)の見直し問題を受けて、宮城県の村井嘉浩知事が12日、東京五輪・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長らと東京都内で会談し、代替地として挙げられている宮城県登米市の「長沼ボート場」での競技開催に向けて協力を求めた。
会談時間は約1時間。“ファーストコンタクト”はかみ合わなかった。村井知事に対して、組織委側からは、長沼会場で開催する上で、以下の9つの問題点が提示された。
(1)分村を用意するためのインフラ、(2)パラリンピック開催のためのバリアフリー対応、(3)車や鉄道による輸送インフラ、(4)会場運営のための地形的な問題点、(5)電力・通信インフラの未整備、(6)観客・関係者の宿泊施設の不足、(7)移動などによる選手への負担、(8)コストの増大、(9)大会後にレガシー(遺産)が残らない。
村井知事は「今日のところは組織委は(協力に)消極的だった」と苦笑いし、「問題点を読んだが、やる気があればクリアできる」と強調した。「お金の問題よりも、人的支援を頂ければ(長沼会場で)やれると信じている」と力を込めた。
また、仮設の宿泊施設など、大会後も県内で活用できるものは県が負担する考えを示した上で、「(競技施設など)五輪のためだけにつくらなければならない施設は、国か都か組織委が負担するしかないと思う。遠藤前大臣からは『国はまったくお金を出すつもりはない』とうかがったが、これは国家プロジェクトなので、国が全く関与しないのは無責任じゃないかな」と話した。
一方で、前五輪相で組織委の遠藤利明理事は「村井知事の熱意はわかるが…」と渋い表情。「長沼会場がどうかという以前に、海の森会場はベストだとIOC(国際オリンピック委員会)も判断した。みんなで一致して決めたので、最上の価値があると思ってる」と、あくまで現行の計画を支持する立場を強調した。
長沼会場については「(コスト面も)調査委員会に精査してもらわないとわからない。あとはアスリートファーストになるのか」と問題点を挙げ、「これから小池知事の判断を受けて、話し合いながら粛々と決断する。都と組織委が対立するのはおかしいので、お互いに同意して、都知事と足並みを合わせる」とした。
今月15日には、小池知事が長沼ボート場を視察する予定で、見直し提案から1カ月をめどに方向性を示す方針。