沙保里ビックリ“入閣” 母校・至学館大の副学長に就任
レスリング女子の五輪4大会連続メダリストで、国民栄誉賞も受賞している吉田沙保里(34)が1日、母校の至学館大(前中京女大、愛知県大府市)の副学長に同日付で就任した。将来的には学長就任も見込まれる異例の抜てき。吉田はコーチ兼任で2020年東京五輪出場を目指しており、大きな肩書を背負っての現役継続となる。
レスリング一筋の人生に新たな道が開けた。グレーのスーツ姿で会見に臨んだ吉田は「至学館の良さをいろんな人に伝えていきたい」と抱負を語り、大学人としての第一歩を踏み出した。
リオデジャネイロ五輪後、本人もびっくりの打診を受けていた。「私をここまで成長させてくれた場所」と恩返しの思いが決断を後押しした。現在は本格的な練習を再開しておらず、試合復帰の時期も未定。14連覇の懸かる来年8月の世界選手権(パリ)も「全く考えていない」と出場しない考えだ。
副学長は学長の補佐が役目。吉田は3人目の副学長となり、渉外広報、学生支援、学生の課外活動を担当する。学生の印象について問われ「元気で明るく、楽しく。(在籍当時の)中京女大から共学になっただけ」と話し、気負いもない。
学生へのアプローチ方法などはまだ手探り状態だが、「常に最初から最後まで全力。最初から諦めず、やってみなきゃ分からない」という自らのレスリング人生で学んだ精神を、広く伝えていくつもりだ。
会見に同席した栄和人監督(56)が「教え子が私を超えて副学長になる。すごく複雑な思い」と、ジョーク交じりに場を和ませたが、吉田は最後まで緊張感を漂わせた。それもそのはずで、周囲の期待はさらに高い。
かねて「沙保里は至学館のシンボル」と話し、今回の人事を主導した谷岡郁子学長(62)は「経営も学んでほしい」と期待を寄せた。「私の全てのノウハウを教える」と覚悟の上で、明言こそ避けたが後継者育成に強い意欲を示した。
リオ五輪の金・銀メダルラッシュで吹き荒れた至学館旋風。吉田の“入閣”で、4年後の東京五輪へ向けて勢いが増す。