稀勢の里 序盤の鬼門突破!4場所ぶり5連勝発進 今度こそ初優勝へ
「大相撲初場所・5日目」(12日、両国国技館)
大関稀勢の里(30)=田子ノ浦=は西前頭筆頭の御嶽海(24)=出羽海=を寄り切り、初日から5連勝を飾った。2横綱1大関を倒して乗るホープに押し込まれながら、最後は力の違いを見せつけた。全勝などハイレベルの初優勝なら一気の綱とりの可能性もある今場所、序盤を満点突破した。横綱白鵬も松鳳山を突き落とし無傷の5連勝。横綱鶴竜は高安に屈し連敗。平幕では貴ノ岩、蒼国来、佐田の海が全勝を守った。
土俵を割り、天を仰いだ御嶽海の顔を稀勢の里は感心したようなまなざしで見た。2横綱1大関を撃破し挑んできた6歳下の若武者に力を存分に出させ、最後はねじ伏せた。
立ち合い、強烈な喉輪、おっつけにも相手はひるまなかった。飛び込まれて体を起こされ、土俵際に追い込まれた。だが左下手が強い。こらえて逆襲に転じると、右上手を取って左四つで相手をガッチリと寄り切った。
「落ち着いていけばどうにかなると思った。良かったんじゃない」と、貫禄の口ぶりで振り返った。
昨年の秋巡業、稽古場に下りる関取衆が少なく、稀勢の里が珍しく若手を指導した。御嶽海を呼びつけ、土俵際で四股を踏ませ続けた。自分は鬼の形相で土俵へ上がった。
日本人力士のエースとして背中を見せてきた。御嶽海が力を付けているか、と問われると「そうじゃないの。そう思うよ。見たとおり」と、どこかうれしげに成長を認めた。
取りこぼすことの多い“鬼門”の序盤。4場所ぶり無傷5連勝でクリアした。昨年は3度の綱とりに失敗。一方で69勝を挙げ、初の年間最多勝を獲得した。先場所、3横綱を倒し、12勝を挙げた。今場所、全勝などハイレベルな初優勝で機運が高まれば、一気に綱とりの可能性もある。
30歳、先日の成人式では10年前を振り返っていた。すでに三役小結の地位にいた。先代師匠の故・鳴戸親方(元横綱・隆の里)からは20歳のお祝いに実印を贈られた。「はんこは今でも使っている。『しっかり(書類など)見てから押せ、それだけ責任がある』って言われました」。それから10年。最強大関となり「責任」は果たしてきた。
今年こそ、もう一つ上の横綱になることが使命だ。全勝は上位では横綱白鵬と2人だけで早くも一騎打ちムード。「あしたはあしたでやるだけ」。6日目もホープ正代に格の違いを見せつけるのみだ。