宇良「たすき反り」で新入幕確実10勝 十両以上では史上初の決まり手
「大相撲初場所・13日目」(20日、両国国技館)
東十両3枚目の宇良(24)=木瀬=が天風(尾車)を珍手「襷(たすき)反り」で下し、3場所ぶり2桁勝利となる10勝目を挙げた。1955年夏場所から決まり手が発表されて以降、幕内、十両で初の決まり手。居反りの名手で知られる人気アクロバット力士が本領を発揮した。3敗を守り、優勝争いも大栄翔、徳勝龍と並びトップ。来場所、新入幕を決定的にし、春場所、地元大阪に凱旋となりそうだ。
映画「マトリックス」のような異次元の動きだ。宇良は左を差されて下がりながらくるっと体を反った。背面になって天風の脇をスルリとすり抜けながら左腕を手繰った。次の瞬間、202キロの巨漢がゴロンと横転した。
何が起きたか分からない館内は驚きと歓声が入り交じった声。「たすき反り」と決まり手が響くと、またざわついた。
1955年夏場所から決まり手が発表されて以降、幕内、十両では初めて。平成以降、幕下以下では聡ノ富士が決めた例はあるものの、超珍技であることは間違いない。
「うまくその場面に応じた対応ができた。急な変化に対応できたと思う。名前が残るのはうれしい」。宇良は大相撲の歴史に名を刻んだことを喜んだ。
居反りで大きな話題となり15年春場所で角界入りしたが、反り技は初めて記録。アマチュア時代、居反り、伝え反りはあるものの、たすき反りは自身でも初めてだった。
前日は幕下の一木(玉ノ井)が居反りを決めた。「居反りキャラはどうぞ。後継ぎということで」と譲った直後の新技。アクロバット力士の本領だった。
今場所10勝のうち決まり手は8種。4日目の豊響戦で見せた驚異の粘り腰、えび反りの“宇良バウアー”などで見る者の度肝を抜いてきた。技に注目されるが、それを可能にするのが体幹の強さだ。手術した左手首はまだ完治しておらず、場所前は下半身の筋力トレーニング中心に強化。今場所の快進撃に結びついている。
東十両3枚目で大きな10勝目。番付は生き物ながら、来場所の新入幕はほぼ確実な勝ち数だ。来場所、地元大阪に幕内力士・宇良が凱旋する。「あと2番あるので」と本人は気を一切緩めない。優勝争いでもトップの3敗で並び、昇進に花を自ら添えるチャンスも十分出てきた。