【稀勢の里手記】腐らずやってきて良かった。つらい時期を思い出すと泣けてきた
大相撲初場所で初優勝し、第72代横綱となった稀勢の里関が26日、手記を寄せ、心境をつづった。全文は次の通り。
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昇進伝達式や綱打ち、土俵入りの練習と続き、横綱になれた実感が徐々に湧いてきた。なかなか思うようにいかない時も我慢し、腐らずやってきて本当に良かった。つらい時期を思い出すと、少し泣けてきた。
初場所千秋楽で優勝パレードに向かう途中、両国国技館の役員室に呼ばれた。八角理事長(元横綱北勝海)から「おめでとう。よくやった」と言われ、握手をしてビールをついでいただいた。今まで最もつらかったのは、大関に上がる前の1年間。手応えをつかんで場所に入っても勝てない。それがずっと続き、投げやりになっていた時期もある。でも優勝して最高位に立つという夢を思い出し、ぶれずに歩んだ。
優勝には届かなかったが、昨年後半あたりから「これだ」という瞬間が結構あった。取組中ではなく、稽古場で四股やすり足など体を動かしている時に、ばちっとはまる感覚。だから自分はまだまだやれるし、もっと良くなる。目指すところにはまだ4割程度しか到達していない。17歳だった新十両当時の体を見ると、まるで小中学生のような体格だ。自分は昔から体つきが5~6歳若いから、今は30歳だが25歳だと思っている。
次の目標は東の正横綱に就くこと。これこそが番付の頂点だから、そのためには春場所で優勝したい。以前に40歳まで第一線で闘うと言ったことがあるが、もちろんそのつもりだ。達成感に浸っている暇などない。
歯がゆい気持ちで千秋楽を迎え「やるしかないですよ」と何度言ったことか。それでも腐らず頑張り続けることに意味があり諦めたらそこで終わりだ。私は早熟で晩成という珍しいタイプ。不器用だけど、一つのことをやり続ける能力は高いと思う。横綱は負けが許されない立場だが、苦しい経験が良かったと思えるような好成績を残していきたい。ここからが自分の新たな土俵人生だと覚悟を決めている。