大相撲の第７２代横綱に昇進した稀勢の里（３０）＝田子ノ浦＝が２７日、東京・明治神宮で、雲竜型の奉納土俵入りをお披露目した。観衆１万８０００人は１９９４年・貴乃花の２万人に次ぐ歴代２位で８１年・千代の富士の１万人、５８年・初代若乃花の８０００人を大きく上回った。１９年ぶり誕生した日本出身横綱が若貴人気に匹敵する“稀勢フィーバー”を到来させた。

　新横綱稀勢の里の晴れ姿を、みんなひと目見たかった。午後３時からの土俵入りにもかかわらず、早朝６時４０分の開門前から行列。「徹夜組もいた」と明治神宮関係者も驚く。

　本殿前の第三鳥居から延々と人が並んだ。列は時間が経つごとに長くなるばかり。６００メートルに達した１２時１０分、明治神宮側が入場制限のため行列を打ち切った。列の先頭にいた埼玉県所沢市から６時３０分に到着した４０代男性は「すごい列。どうしても見たくて」と興奮気味だった。

　観衆１万８０００人は９４年の貴乃花に次ぐ歴代２位。ただ、貴乃花は土曜日開催だっただけに平日では前代未聞。土俵入りを行う本殿前には５５００人だけが入り、１万２５００人は外から見守る異例の事態となった。

　若貴人気に匹敵する注目の中、新横綱は真新しい綱を巻き、太刀持ちに小結高安（２６）＝田子ノ浦、露払いに幕内松鳳山（３２）＝二所ノ関＝を従え登場。「土俵の鬼」初代若乃花から借りた三つぞろいの化粧まわしで豪快な雲竜型をお披露目した。

　ドスンと３度、四股を踏む度に１万８０００人から一斉に「よいしょー！」と掛け声が上がる様はまさに壮観。幼少期より憧れ、まねした、せり上がりも強かった。

　「無事に終えて良かったと思っています。たくさんの方に見ていただいて本当にうれしかった。ありがたい。力強い姿を見ていただいた」。少し安堵（あんど）感をにじませて、１分２８秒の堂々たる“横綱初土俵”を振り返った。

　初場所で悲願の初優勝を果たし、今週の横綱昇進の行事はこれで一段落した。「１５年間、場所終わりは何十回も味わってきたけど、こんな濃い１週間はなかった。忘れられない」。１９年ぶりに誕生した日本出身横綱は史上最大級の期待を背負い、一歩を踏み出した。