平出和也氏に植村直己冒険賞 登山&カメラの“二刀流”

 冒険や探検などで業績を挙げた個人、団体に贈られる「植村直己冒険賞」の受賞者が16日、都内で発表され、アルパインクライマーと山岳カメラマンの“二刀流”で8000メートル峰5座、エベレスト3回登頂を果たした平出(ひらいで)和也氏(37)が選ばれた。

 平出氏は困難な未踏ルートに多数挑戦し成功してきたと同時に、2013年に世界最高齢80歳でエベレストに登頂した三浦雄一郎氏ら他の冒険家に同行。カメラ機材を持ち、時に本人より先行して山を登り、横や後ろからも撮影し記録に残してきた。「一流の冒険家しか見られなかった景色を、多くの人に見せてあげたい」と、呼吸するのも困難な場所に重量のあるドローンやカイトなども持ち込み、冒険と撮影を両立してきた。

 受賞に「最近はカメラなどの電子機器が小さくなったというのが根底にはあるのですが、私がそこで撮ることで世界で初めて伝えられる。ぼくにしかできない役割だと思っている」と胸を張った。

 平出氏は東海大山岳部出身。01年に中国チベット自治区のクーラ・カンリ東峰(7381メートル)を初登頂。08年にはインドのカメット峰(7756メートル)の未踏の南東壁から登頂に成功し、パートナーの谷口けい氏とともに登山界のアカデミー賞とも言われる「ピオレドール賞」を日本人として初めて受賞した。

 “二刀流”のメリットで、一流の冒険家に同行する中で、登攀(とうはん)技術に加え、考え方や精神面も吸収してきた。「一流は山でどういう判断をするのか、私の知らない世界を持っている冒険家から学ぶことができた」。

 三浦氏とエベレスト登頂した際には、最後のキャンプ地で猛烈な吹雪に遭った。最終アタックを控え緊張が高まる中、三浦氏からは「平出くん、この吹雪も撮っておいて」と余裕のある口ぶりで言われた。「ふつうは視野が狭くなるものだが、足元をしっかり見えていた。生涯冒険家でいられる理由が分かった」という。

 冒険心は尽きることがなく、今夏にはパキスタンのシスパーレ(7611メートル)に挑む。2007年から3度挑戦して敗退しており、「人生をかけて登りたい山。自分自身に残された宿題をしに行く」と目標を掲げた。

 また特別賞には、兵庫県宝塚市の障がい者支援施設「はんしん自立の家」甲山登山隊が選ばれた。登山家や学生らのサポートで障がい者が西宮市の甲山(標高309メートル)が2006年から11年で10回登山に成功した功績が認められた。

 授賞式は、平出氏がシスパーレ挑戦を終えた後の9月30日に「植村直己冒険館」がある兵庫県豊岡市で行われる。

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