マラソン選考一発勝負断念「大人の理由」一因に 従来のレースからは不満も
日本陸上競技連盟が18日、2020年東京五輪マラソン代表の選考基準を発表した。従来の複数のレースから選手を選考するのではなく、新設する予選レースでの順位から2枠と、その後に行われる複数のレースで、最速タイムを出した選手1枠という基準が明確になったが、以前から議論されていた、1つのレースでの一発勝負は見送られた。このことに、強化委員会マラソン強化戦略プロジェクトリーダーの瀬古利彦氏は、「大人の理由」があることに含みを持たせた。
瀬古氏は「どうせ変えるなら一気に一本化という話も当然ありました」と予選レースの上位3選手が自動的に代表となるような「完全な一発勝負」とする案も議論にあったことを認めた。強化委員会の中には、強化として選びたかったという選手が救われないのではないか、という思いから一本化は断念したと説明したが、その上で「いわゆる大人の理由もあるんですけど、それを言ってしまうとちょっと…」と、別の理由があることも示唆した。
従来の選考方法では、五輪ごとの変更はあったものの、世界選手権を含め、五輪代表枠よりも多い選考レースが存在した。好成績を残した選手から代表を話し合いで決めていたことから「不透明だ」とする指摘があった。このため、「一発勝負」の案は以前から根強かったが、各大会を主催している企業は、長年にわたって陸上界を支えてきた存在でもあり、五輪代表選考と完全に無関係にしてしまうと各大会の意味が薄れてしまうことが懸念されていた。
東京五輪方式では、新設される五輪予選にあたる「MGCレース」(仮称、19年9月以降開催予定)の出場権を得る目的や、「MGCレース」以後に残された最後の1枠を争うレースとしての存在価値が従来の選考レースにも残る。
ただ、尾縣専務理事は「3枠あるところが1枠になるわけですから、それに対する不満というのはいくつかの大会には言われました」と実情を明かした。「今年から始まって2020年までの1つのパッケージと思ってもらいたい。2020年までに盛り上げて、その後の財産を残すんだという取組をやっているので、ご理解いただきたいと思います」と求めた。
瀬古氏も「大きな決断をするときには、ナタを振り下ろさないといけないという気持ちもございます。すべての方には満足していただいていない可能性もございますが、今回は強い決意でこういった取組を始めようとしています」と理解を求めた。