大関高安「正々堂々精進します」第一声裏返ったけど兄の“雪辱”果たした
日本相撲協会は5月31日、両国国技館で名古屋場所(7月9日初日、愛知県体育館)の番付編成会議と臨時理事会を開き、夏場所で11勝を挙げた関脇高安(27)=田子ノ浦=の大関昇進を満場一致で決めた。新大関の誕生は15年夏場所後の照ノ富士以来。平成生まれの日本出身力士では初めて。都内ホテルで行われた伝達式では「大関の名に恥じぬよう、正々堂々精進します」と口上を述べた。同部屋の横綱稀勢の里(30)は控室で口上をかまないよう助言するなど、満面の笑みで弟弟子の晴れ姿を見守った。
緊張でノドがからからだった。使者を務めた春日野親方(元関脇栃乃和歌)、片男波親方(元関脇玉春日)から満場一致で大関昇進が決まったことを伝えられた高安。さあ注目の口上、その第一声「謹んでお受け致します」でやや声が裏返った。
前日は「夢の時間。一生残るもの」と話した夢舞台。これも人柄のにじみ出た愛きょうだ。その後は満点。「大関の名に恥じぬよう、正々堂々精進します」と美声を張り上げた。
横綱昇進時の口上で「かんだ」稀勢の里から、「かまないよう」助言された。「間違えないように。自分の気持ちを正直に言えた」と、兄弟子の“雪辱”を果たした。
「正々堂々」こそ歩む相撲道。「一番好きな言葉。自分の覚悟としてこういう言葉を選んだ。どんな状況でも顔色一つ変えず胸を張っているのが自分の大関像。正々堂々と自分の大関像を作っていく」と所信表明した。
平成生まれの“現代っ子”だ。中卒で角界入りし、厳しい環境に耐え切れず、部屋からの脱走は「10度以上」と父・栄二さん。「甘ちゃん」を一人前にしてくれたのが先代師匠の故鳴戸親方(元横綱隆の里)だった。
厳しい師匠だったが、同じたたき上げでも稀勢の里とは違い、怒られた数は少ない。部屋に呼ばれ「冷蔵庫のアイス食っていいぞ」と優しい言葉をかけてくれた。「素直な心を持て。大成する人は素直な心を持っている」。師匠に言われ続けた金言を今も胸に刻む。
兄弟子と2人、天国の師への恩返しはこれからだ。稀勢の里との優勝争いを「できたら最高」と目標に掲げた。「ここから上に上がるには優勝しかない。優勝を目指したい」と次は綱とりに意欲。4横綱は全員30歳超。20代の台頭著しい角界で世代交代の旗手となる新大関が誕生した。