“和製ボルト”飯塚翔太が覚醒の10秒08「ボルトも200から100に」
「陸上・布勢スプリント」(4日、コカ・コーラウエストスポーツパーク陸上競技場)
男子100メートルが行われ、リオデジャネイロ五輪400メートルリレー銀メダルメンバーの飯塚翔太(25)=ミズノ=が、1本目で日本歴代9位タイの10秒10(追い風1・7メートル)をマークすると、2本目で日本歴代7位となる10秒08(追い風1・9メートル)をマーク。これまでの自己ベスト10秒22を0秒14も更新した。ケンブリッジ飛鳥(24)=ナイキ=も2本目で10秒12を出し、飯塚とともに世界選手権の参加標準記録(12秒12)を突破した。
“和製ボルト”の異名を持つ25歳が、100メートルでもそのポテンシャルを爆発させた。
1本目で自己ベストを大幅に更新する10秒10をマークし「ビックリした」と目を丸くすると、リオ五輪リレー銀メダルメンバー・ケンブリッジと同走した2本目は好スタートからケンブリッジらを突き放し、日本歴代7位の10秒08まで更新。「(10秒)1台を出せれば100点と思ってた。うれしい」と、端正な顔をほころばせた。
これまで密かに抱えていた“コンプレックス”を払拭した。歴史的な快挙となったリオデジャネイロ五輪のリレーでの銀メダル。ただ、その後、選手紹介をされる時に、100メートルのベストタイムを紹介されると、9秒台の期待が懸かる桐生が10秒01、山県が10秒03、ケンブリッジが10秒10に比べ、200メートルが主戦場の飯塚は10秒22。「200メートルのタイムで紹介されるならいいけど、100メートルはキツかったですよ。なんであんなに遅いのに選ばれてるの?って思われてたと思う」-。
これでケンブリッジの自己ベストを追い越し、メンバー中3番手に浮上。「よかったです」と、笑った。
日本選手権では100メートルはエントリーしておらず、今季はまず日本歴代2位の記録を持つ200メートルで日本人初の19秒台を狙う。「100メートルのこのスピードを持って、コーナーからググッと行ければ」と、手応えを滲ませた。
そして将来的には、100メートルで日本人初の9秒台が期待される桐生、山県、ケンブリッジの銀メダルメンバーとの争いにも意欲。「100メートルはやっぱり花形。スプリンターなら誰もがそうだと思う。積極的に挑戦していきたい」と、力を込めた。
世界記録9秒58を持つ“人類最速の男”ウサイン・ボルト(ジャマイカ)も、もともとは200メートルが主戦場だった選手。「ボルトも200メートルから100メートルで成功しましたからね」と、屈託なく笑った飯塚。2010年世界ジュニア選手権の200メートルで同大会日本人初の金メダルを獲得し、“和製ボルト”と言われてきた男が、本格的に覚醒しようとしている。