「陸上・日本学生個人選手権」（１０日、ＢＭＷ平塚スタジアム）

　男子１００メートルが行われ、準決勝で多田修平（２０）＝関学大＝が、追い風４・５メートルの参考記録ながら、電気計時では国内レース初の日本人９秒台となる９秒９４をマークした。

　追い風参考条件での９秒台は、桐生祥秀（東洋大）の９秒８７、ケンブリッジ飛鳥（ナイキ）の９秒９８に続く３人目。多田は決勝では公認条件で、日本歴代７位タイとなる１０秒０８（追い風１・９メートル）で優勝。世界選手権の参加標準記録（１０秒１２）を突破し、代表入りに名乗りを挙げた。

　これで世界選手権の参加標準記録を突破し、日本選手権の１００メートルにエントリーしているのは、桐生（１０秒０４）、山県（１０秒０６）、多田（１０秒０８）、ケンブリッジ（１０秒１２）の４人。１００メートルの代表枠は最大で３となっており、驚異的な成長曲線を描く多田の登場で、リオデジャネイロ五輪の４００メートルリレー銀メダルメンバーで、１００メートルを主戦場とする桐生祥秀、山県亮太、ケンブリッジ飛鳥の３人から世界選手権代表から漏れる選手が出る可能性が出てきた。

　多田のレースを見守った日本陸連の伊東浩司強化委員長は「いい走りだった。今までまったく歯が立たなかった桐生くんや山県くん相手でも、今日のような前半の走りができれば可能性はある。記録の短縮率は上がってるので」と、頷いた。

　４人の走りについて「桐生くんは今季は安定しているし、向かい風で１０秒０台を出しているように地力がついてる。加速は抜群。山県くんは怪我のない前提では、１番実力がある。スタートからしっかりレースを組み立てられる。ケンブリッジくんは混戦に持ち込めば、しぶとく粘れる」と、評価。かつてないほどハイレベルな日本人最速争いに「９秒台をさまたげる要因はなくなってきている。９秒台は、いつでも（出る）という状況になってきた」と、嬉しい悲鳴を上げていた。