ノーシードの奥野が女子55キロ級を制す 神様・吉田から「絶対優勝しろよ」
「レスリング全日本選抜選手権」(17日、代々木第二体育館)
世界選手権(8月21~26日、パリ)の代表選考会を兼ねて男女計9階級を行い、女子55キロ級はノーシードの奥野春菜(18)=至学館大=が初優勝し、初の世界代表へ前進した。
初戦を待つ奥野の肩を後ろからたたいたのは、リオデジャネイロ五輪53キロ級銀メダルの吉田沙保里(至学館大職)だった。「頑張れ。絶対優勝しろよ」と励まされ、ノーシードから頂点へ駆け上がった。
吉田の父栄勝さん(故人)が創設した津市のレスリング道場「一志ジュニア」に通い、5歳で吉田のアテネ五輪金メダルを現地で目に焼き付けた。そんな「神様」と憧れる大先輩からのメッセージが、何より力になった。
三重・久居高から、吉田を追うように愛知の至学館大へ。競い合う仲間の存在の大きさを実感する日々だ。「高校では経験者が、自分一人みたいな感じだった。応援があると、常に強気で戦える」
大会前には、大学OGでリオ五輪63キロ級金メダルの川井梨紗子や今大会の女子58キロ級を制した坂上嘉津季とトレーニング。スパーリングでフォールされ、全体練習の後に涙した経験も、上位に立ち向かう負けず嫌いの土台になった。
「至学館大の練習で、心が強くなったおかげかな」。そう振り返る場面が決勝であった。2014年世界選手権で55キロ級を制した浜田千穂(キッコーマン)に2-0とリードした終盤、場外に押し出される寸前で踏ん張り、サイドに動いてテークダウンで2ポイントを加点。直後、タックルを浴びて2ポイントを返されただけに、そのテークダウンが大きかった。
出場へ一歩前進した世界選手権にも「絶対出たい。合宿でもアピールする」と意欲満々の奥野。成長のチャンスを求め続ける。