第2の美宇、張本「すぐ出てくる」日本卓球躍進の裏に充実若手強化システム
日本卓球界が躍進を続けている。男女ともに団体戦でメダルを獲得したリオデジャネイロ五輪に続き、先日行われたドイツ・デュッセルドルフ世界選手権では計5個のメダルを獲得した。中でも、女子シングルスで48年ぶりのメダルとなる銅メダルを獲得した17歳の平野美宇(エリートアカデミー)、男子シングルスで史上最年少の13歳で8強入りした張本智和(エリートアカデミー)ら若手の台頭が著しい。躍進の背景には、日本協会が17年来着実に築き上げてきた若手強化システムがある。
平野、張本らは10代前半から国際大会を転戦し、世界で戦うことを当たり前のように意識づけられてきた。日本協会の宮崎義仁強化本部長(58)は「日本は若手の宝庫で、次から次に出てくるシステムが出来上がっている。張本、平野に続く選手はすぐ出てきますよ」と力説する。
契機となったのは、2001年に大阪で行われた世界選手権。男子団体で日本は13位に終わり、抜本的な強化プランの見直しが急務となった。同年には小学高学年の代表チームを設立し、それまで自費などで行っていた合宿、遠征を協会負担でまかなえるようになった。02年には有望な若手をドイツに卓球留学させる制度を確立。ここで頭角を現したのが水谷隼(木下グループ)だった。
さらに大きな契機となったのが、五輪代表を育てる“虎の穴”とも言える日本オリンピック委員会(JOC)エリートアカデミーの08年開校だ。平野や張本ら中学1年から高校3年のアカデミー生は、同年都内に完成したナショナルトレーニングセンター(NTC)を拠点とし、近隣の学校に通いながら全寮制の生活を送る。朝6時頃に起床し通学。授業が終われば午後5時頃から4時間ほど練習する。食事管理や睡眠管理も行っており、文字通り“卓球漬け”の日々を送る。
中国出身コーチから技術指導を受けるほか、NTCではトップ選手や分析スタッフとも交流できるため常に世界を意識できる。さらに科学的なトレーニングを行えるほか、トップアスリートが利用する食堂で栄養満点の食事を取れる。フィジカルが課題だった張本は1年で体重が5キロ以上増加し、一気にシニアで戦えるトッププレーヤーに成長した。
「2020年(東京五輪)で終わりじゃなく、24年、28年対策もスタートしている」(宮崎氏)。昨年7月には、小学4年生以下の有望選手188人を指名しての強化を開始。まだまだ中国の壁は高いが、10年後には今の小、中学生たちが立場を逆転しているかもしれない。(デイリースポーツ・藤川資野)