宇良、男泣き 電光石火の早業でとったり初金星「信じられない」
「大相撲名古屋場所・9日目」(17日、愛知県体育館)
東前頭4枚目の宇良(25)=木瀬=が横綱日馬富士を鮮やかなとったりで破り、自身初の金星を挙げた。立ち合い日馬富士よりも低く当たり、狙いすましたように相手の右腕を抱えて土俵にはわせた。所要15場所目は年6場所制となった1958年以降で2位タイのスピード記録で、日本出身力士では北勝富士に並んで最速。入門から2年4カ月、真夏の名古屋でホープが真価を発揮した。
電光石火の早業だった。注目の立ち合い。宇良は日馬富士のお株を奪う低さで当たった。瞬時に左へ動き、相手の右腕を抱え込む。間髪を入れず右へ回り込み、俵に詰まった横綱を土俵にはわせた。
次代の角界を担うホープの快挙達成に、大入り満員の愛知県体育館が揺れた。その中心で25歳の若武者が、13本の懸賞金の束をがっちりつかんだ。一昨年春場所の初土俵から所要15場所での初金星獲得は、小錦の14場所に次ぎ、大砂嵐、北勝富士と並ぶスピード2位の快記録(幕下付け出しを除く)。真夏の名古屋で時代が動いた。
うれしさのあまり、周囲の目もはばからず、男泣きした。取組後のNHKインタビュー。「自分の相撲を力いっぱいやった。体が勝手に動いた。うれしいです。信じられないですね。もうちょっと(感想が)出てこない」と言ったところで涙があふれ言葉を詰まらせた。
支度部屋に戻っても興奮は冷めなかった。「どんどん前に出ていこうという気持ちだった。横綱に自分の相撲が通用したとは思っていないけど、これから自信を持っていきたい。勝った瞬間のこと?いや、もう分からないです」。何度も何度も手で涙をぬぐった。
期待のホープの初金星獲得。見守った八角理事長(元横綱北勝海)も「今日は宇良がよかった。勝負度胸があるし、緊張していなかった。いろいろなことができるのは強みだ」と賛辞を惜しまなかった。
前日の白鵬戦は完敗したが、わずか24時間後にもうひとりの横綱を撃破した。勢いに乗って迎える10日目の相手は新大関高安。帰り際「まだ場所は終わっていない。残りも頑張りたいですね」。初金星の喜びに浸った時間はもう過去のこと。一瞬たりとも歩みは止めない。