「大相撲名古屋場所・１３日目」（２１日、愛知県体育館）

　昨年のアマ横綱で幕下１１枚目の矢後（２３）＝尾車＝が同５３枚目の竜勢（３０）＝鏡山＝との全勝対決を制して優勝を果たし、十両昇進を濃厚にした。幕下付け出しデビューから所要２場所での十両昇進は、１５年名古屋場所の御嶽海以来１２人目の史上最速タイ記録となる。

　立ち合いから突き放した矢後は、竜勢のいなしにバランスを崩されながらも冷静に対応し、まわしを取ると力強く寄り切り。花道を引き揚げると、あふれるものを抑えきれずに目頭を押さえ、「うれしいす」と、プロ初Ｖを喜んだ。

　デビューした先場所は慣れないプロの土俵に緊張。「自分の相撲が取れなかった」と、５勝２敗に終わったが、今場所は「慣れてきて、周りもよく見えて集中できたのが勝ちにつながった」と、大器の本領を発揮した。

　小学５年生で相撲を始めたが、中学時代に左ヒザの全十字じん帯断裂と半月板損傷、右ヒザも半月板損傷の重傷を負う苦労も経験。手術は受けておらず、「左は調子が悪いときがありますが、うまく付き合っています」という。

　故郷の北海道出身の幕内が不在の現状に、「これから上がっていきたい」と意欲。目標の力士は横綱稀勢の里で、「ああいう、どっしりとした相撲を取りたい」と目を輝かせた。