桐生祥秀、再出発の10秒05 「今はボロクソに言われても…見とけよ」
「陸上・トワイライトゲームス」(23日、代々木公園陸上競技場)
男子100メートルが行われ、リオデジャネイロ五輪男子400メートルリレー銀メダリストの桐生祥秀(21)=東洋大=が、日本人初の9秒台こそならなかったが、大会新記録となる10秒05(追い風0・6メートル)で優勝した。1カ月前に行われた日本選手権では4位に終わり、個人種目での世界選手権(8月・ロンドン)出場を逃していた。20年東京五輪まで24日で、ちょうどあと3年。日本短距離界の主役となるべき男が、悔しさをバネに再スタートを切った。
これが本来の桐生の走りだった。好スタートからグングン加速。中盤以降、他の選手を一気に引き離し、風のようにゴールを駆け抜けた。9秒台こそならなかったが、今季4度目の10秒0台となる大会新記録の10秒05。「日本選手権では自分の走りができなかった。ここで取り戻そうと思った」と、再出発のレースを飾った。
1カ月前に流した悔し涙を、糧にした。優勝候補の筆頭として臨んだ日本選手権。サニブラウンらに敗れ、4位で個人種目の代表入りを逃した。気丈に取材対応した後の一人壁に突っ伏して涙を流していた。
直後の1週間は何も考えられなかった。「練習場に出ても、何もしなかった。何を目標にすればいいのか…」。それでも迷いを断ち切るためには、ただ、走るしかなかった。「時間というか、自分は走ることしかできないから」。翌週には、真夏の正午過ぎから50メートルを70本、がむしゃらに走り続けた。時間にして3時間半。流した汗の分、気持ちは前向きになっていった。
8月の世界選手権はリレーでの出場が確実。そして、視線の先には24日でちょうど3年前となる東京五輪もある。まだ21歳。いくらでも挽回する時間はある。大学の4年間で日本選手権優勝は、14年大会の1度だけ。シニアの国際大会に個人で出場できたのも、リオ五輪だけだった。大舞台での脆さを指摘する声も聞こえる。「今は弱いと思われていると思う。でも、弱ければ強くなればいい。今はボロクソに言われてもいい。“3年後は見とけよ”と」。このままでは終われない。負けず嫌いの桐生らしく、高らかに逆襲を宣言した。