川内、代表ラストラン9位 出し尽くした…ゴール後は車いすで病院直行
「陸上・世界選手権」(6日、タワーブリッジ発着)
男子マラソンが行われ、日本勢は今大会限りで日本代表を引退する川内優輝(30)=埼玉県庁=の9位が最高で、中本健太郎(34)=安川電機=は10位、井上大仁(24)=MHPS=は26位に終わった。2時間8分27秒をマークしたジョフリー・キルイ(ケニア)が優勝した。
どこまでも川内らしい、壮絶な“ラストラン”だった。序盤には左太ももを看板に激突。レースが動いた中盤過ぎにコースに足を取られて転倒した。25キロ過ぎには給水に失敗。それでも最後は出場選手の中で群を抜く70回に及ぶマラソンの経験が生きた。一時は17位と入賞ラインから1分以上遅れたが、そこから怒とうの猛追。入賞までは3秒届かず、ゴール後は天を仰ぎ崩れ落ち、車いすで搬送された。それでも完全燃焼だった。
「最低でも入賞って言ってきたんで、最低にも届いてない。許してくれない人もいるかもしれないけど、自分としては日本代表としてやれることはやれました」。万感の涙が頬を伝った。
代表として最後の場所となったロンドンは運命の地だった。
12年の東京マラソンで惨敗に終わり、ロンドン五輪の出場を逃した。翌日、丸刈り姿で会見する川内の姿があった。「さらしものになった方がいい」。何の責任も背負う必要がない市民ランナーが、そう言って日の丸を狙うことの重みを訴えた。「本当に悔しかった。今回の開催地がロンドンだから、ここまで日本代表でいられた」。五輪に届かなかった舞台で迎えた“日の丸ラストラン”で、すべての思いを昇華させた。
今後も一市民ランナーとして、日本、そして世界のマラソンを走り続ける。東京五輪の選考にかかる12月の福岡国際マラソンも走る。代表になるつもりはなくても、“悪役”として選考を荒らしていくつもりだ。
「自分がここまでやれた。もっと実力のある選手なら入賞やメダルが狙える。これからも日本のマラソンをよろしくお願いします!」。
数々のドラマチックなレースと、不屈の魂を日の丸に刻み込み、“最強市民ランナー”は、一つその役割を終えた。