戦いは10秒00の先へ 桐生も覚悟「抜きつ抜かれつが始まる」短距離界の進化
「陸上・全日本実業団対抗陸上選手権」(24日、ヤンマースタジアム長居)
男子100メートル決勝が行われ、リオデジャネイロ五輪代表の山県亮太(25)=セイコーホールディングス=が10秒00(追い風0・2メートル)の日本歴代2位タイのタイムをマークし、大会2連覇を達成した。3カ月前の日本選手権で6位に終わり、世界選手権代表から落選した因縁のスタジアムで自己ベストを0秒03更新。桐生祥秀(21)=東洋大=の日本人初の9秒台の快挙に沸く中、日本短距離界をけん引してきたもう1人のエースが、意地の快走を見せた。
山県の快走の一報を聞いた桐生は、この先の戦いを覚悟したように自身のツイッターでつぶやいた。
「こっからバンバン抜かれたり抜いたりが始まるんやろな」-。
2週間前に、桐生によってついに打ち破られた“10秒00”の壁。開けた視界を目がけて、この日、山県が恵まれた条件ではない中で9秒台まであと10センチに迫った。今夏の世界選手権で準決勝に進出したサニブラウン・ハキーム(自己ベスト10秒05)、多田修平(自己ベスト同10秒07)、ケンブリッジ飛鳥(同10秒08)も、条件次第でいつ9秒台を出してもいいレベルにいる。
今季、日本スプリント界は目覚ましい躍進を遂げた。日本歴代10位以内のタイムを出したのはなんと6人。桐生(10秒01→9秒98)、山県(10秒03→10秒00)、サニブラウン(10秒22→10秒05)、多田修平(10秒25→10秒07)、ケンブリッジ飛鳥(10秒10→10秒08)、飯塚翔太(10秒22→10秒08)と、全員が昨季から自己ベストを大きく更新した。
リオデジャネイロ五輪、今年の世界選手権とリレーでは世界大会2大会連続のメダルを獲得中。かつてないほどのハイレベルな切磋琢磨が、アジアに短距離の強豪国を生み出そうとしている。