日馬富士「全身全霊」逆転優勝! 異例づくし4金星配給から 最少勝ち星11勝
「大相撲秋場所・千秋楽」(24日、両国国技館)
横綱日馬富士が歴史的大逆転で昨年名古屋場所以来、7場所ぶり9度目の優勝を果たした。1差で追う大関豪栄道を本割、優勝決定戦とともに電車道で寄り切った。10日目以降に3差を逆転したのは初めて。1場所15日制が定着した1949年夏場所以降、11勝4敗での優勝は最少勝ち星で96年九州場所の武蔵丸以来3度目、1場所4個の金星配給で優勝は史上初となった。99年ぶり3横綱2大関の不在場所を1人横綱が「全身全霊」で締めた。
中盤まで休場崖っぷちでヘロヘロだった日馬富士が別人だった。土俵上、どう猛な視線で豪栄道を完全にのんだ。弱った獲物を仕留めるのは造作もない。
千秋楽の結び、頭で当たって両前ミツを引き一気に出て決めた。4敗で並び決定戦に持ち込むと、もはや敵ではなかった。相手の懐に食いつくと電車道で瞬殺。7場所ぶり9度目の賜杯を手にした。
「素直にうれしい。目の前の一番に命を懸けて、全身全霊を持って相撲を取りました」と優勝インタビューで声援に応えた。初の一人横綱の重圧にも耐えた。「心技体がなかなか合わず自分の相撲が取れなかったけど、前を見て積み重ねた」とかみしめた。
場所前は手術を検討したほど、深刻な左肘痛。古傷の右肘、下半身も満身創痍(そうい)の体は動かず、3日目から3日連続で平幕に惨敗。10日目にも4個目の金星を配給した。
「年だな。いくら寝ても疲れが取れない。一生懸命やってもつながらないのが悔しい。落ち込んでいるのか年なのか」と、弱々しい発言を連発。ただ4横綱全滅のピンチを回避するために協会や周囲の期待を背負い、気力で土俵に立ち続けた。
家族の支えもあった。3人の子供から毎日のように「頑張れ、頑張れ」「優勝して」と手紙や絵をもらい励まされた。「下がる場所もない。前を見て明日を見つめて頑張るだけ」。あきらめなかったことが勝負運を呼び込む。トップを快走した大関が終盤まさかの失速。好機を逃さずモノにするのはさすが歴戦の勝負師だった。
4金星配給での優勝は史上初。1場所15日制が定着した1949年以降、10日目終了時点での3差逆転も初めて。11勝の優勝は横綱では最少星だ。異例づくしのVに「土俵の神様が味方してくれた。精いっぱいやった結果。優勝は優勝なので」と堂々と胸を張った。
3横綱2大関が休場し大荒れとなった秋場所。13日目終了時に16人が優勝圏内という異常事態も巻き起こった。終わってみれば歴史的大逆転劇で幕を閉じた。「ほっとしている。いろんな人に心配をかけた」。ずっと張り詰めてきた緊張を解き、日馬富士の顔にようやく笑みが戻った。