協会本腰!貴乃花親方“包囲網” 冬巡業に帯同させず真相究明協力へ最後通告
日本相撲協会の定例理事会が30日、東京・両国国技館で開かれ、前日引退した元横綱日馬富士(33)に暴行され負傷した平幕貴ノ岩(27)=貴乃花=の師匠で、巡業部長を務める貴乃花親方(45)=元横綱=が冬巡業に帯同しないことが決まった。広報部の春日野部長(元関脇栃乃和歌)が代理を務める。暴行問題の真相究明を優先することが理由だが、事実上の“処分”。鳥取県警の捜査を終えた時点で危機管理委員会による貴ノ岩の調査に応じることを明言した貴乃花親方に対し、“最後通告”を突き付けるかのような決議も取られた。また、危機管理委員会は日馬富士の暴行の詳細について中間報告を行った。
理事会のテーブルは貴乃花理事の両側を春日野理事(元関脇栃乃和歌)、尾車理事(元大関琴風)が固め、対面に八角理事長(元横綱北勝海)が陣取った。日馬富士の暴行問題で対立し続けた協会執行部による完全な“貴包囲網”だった。
協会に“弓引く”理事をただですまさなかった。巡業部長を務める貴乃花理事が12月3日から長崎・大村で始まる冬巡業に帯同することを認めなかった。
尾車理事は「本件への対応もありますし、また巡業の勧進元の方々や地元ファンの皆さまのことも配慮し冬巡業は、春日野広報部長に担当してもらう」と説明。暴行問題の真相究明と巡業に混乱を招かないための措置であるとした。しかし、暴行問題を巡る一連の立ち居振る舞いを踏まえた事実上の“処分”といえた。
貴ノ岩の聴取を拒否する強硬さも非難された。ある理事によれば「なぜ(貴ノ岩の状態に関し)言えないのですか」と多数の理事が詰問。理事の一人として協会に協力しないことにも、疑問を投げかけられた。
「言えません」「警察の捜査が終われば」と冷静に貴乃花理事は繰り返した、という。しかし危機管理委員会の高野利雄委員長(元名古屋高検検事長)から「捜査が終わった段階でご協力いただけますか」と詰められると、折れるしかなかった。「協力します」。12月上旬と見込まれる日馬富士の書類送検後、聴取を受ける旨を伝えた。
早期の真相究明を目指す協会としても言質を取り、年内決着のメドを付けた。12月20日に臨時の横綱審議委員会と理事会を開き、危機管理委員会の最終報告を受ける。尾車理事は「引退した日馬富士に懲戒は行えない。ただし再発防止のためにどのような懲戒処分が妥当か、12月20日に横審の意見を聞いた上で、理事会の結論を出します」と明言した。
反撃を許さぬ決議も取った。「日馬富士暴行問題に関する決議」では「すべての理事、監事、協会員、職員が結束して協力し合う」との文言が入った。【決議の根拠】の第3項では「協会員及び職員は、危機管理委員会から指示または命令が出されたときは、その指示または命令に従って行動しなければならない」とある。今後抵触するようなことがあれば、処分は必至。自身も同席した理事会で決議されており、“最後通告”となった。
八角理事長は会見で「(貴乃花理事は)納得していた」と振り返った。3時間半の理事会を終えた貴乃花理事は無言で国技館を後にし、部屋へと戻った際も沈黙を貫いた。不可解な行動で騒動を混迷させてきたが、真意を語らぬまま、立場だけが苦しくなった。