尾道、文武両道で花園4強再現狙う 偏差値「70」の主将が引っ張る
「全国高校ラグビー」(27日開幕、花園)
広島代表として出場する尾道。今年も県予選では圧倒的な力を見せつけ、11大会連続12度目の全国切符を手にした。聖地・花園で目指すは3大会前に成し遂げた4強入りの再現だ。進学校であるため、練習時間は限られているが、就任16年目の梅本勝監督(55)の指導の下、「文武両道」を実践しながら強化を図っている。
向島にある尾道のグラウンドに選手の大きな声を響き渡る。開幕まで2週間を切り、本番へ向けて総仕上げの段階に入った。藤原創主将(3年)は「開幕までにもう一つ上のレベルにいけるように、しっかり調整したい」と表情を引き締める。
広島県では無敵の存在だ。県予選では3試合戦い、相手に1本もトライを許さなかった。決勝(11月19日)の崇徳戦も13トライを奪い、83-0の圧勝で11大会連続となる花園切符をもぎとった。
花園では3年前、快進撃を見せてベスト4入り。しかし、一昨年は1回戦、昨年も2回戦で敗れ、悔し涙をのんできた。今年のチームは昨年からメンバー9人が残り、経験値は高い。「3年前のベスト4を超えることが目標です」と藤原主将は意気込む。
「文武両道」を実践している。部員の大半は寮生活を送り、約7割が特進クラスに在籍。毎日1時間の早朝練習は設けているが、放課後、全体練習するのは週に3日のみ。あとの日は学習に当てる。「おそらく花園に出場するチームで最も練習時間が短いかもしれませんね」と梅本監督。その根底には就任16年目を迎える指揮官の「高校生の本分である学業に真剣に向き合うことで生まれる集中力がラグビーにも生きる」という持論がある。
多くの社会勉強も積んでいる。今年7月には10泊11日の「北海道探検合宿」を実施。広島からバスとフェリーを乗り継ぎ、北海道全土を巡った。屯田兵やアイヌ民族の歴史を学んだり、網走刑務所や五稜郭などを訪問。牛の乳しぼりを体験したり、北大ラグビー部とも交流するなど貴重な時間を過ごした。
別の年には富士登山や鹿児島の知覧特攻平和会館の訪問、しまなみ横断サイクリングも実施した。地域のイベントやボランティア活動に積極的に参加し、生徒会の会長は13年連続でラグビー部員が務める。梅本監督の目指す「人間形成」がそのままラグビー部の強化に結びついている。
チームを引っ張る藤原主将は、まさに“梅本イズム”の申し子だ。毎朝4時に起床し、勉強してから早朝練習に参加する。偏差値は「70」。難関国立大進学を目指し、来年1月にはセンター試験も控えている。勉強とラグビーを両立する姿は同級生や下級生のお手本となっており、「チーム全体にいい影響を与えてくれる」と梅本監督も目を細める。
花園では1回戦(28日)で岐阜工と対戦する。順調に勝ち進めば、Aシードの桐蔭学園(神奈川)と激突する元日の3回戦が大きなヤマ場となる。「花園でも一戦一戦、力をつけてくれると思う。決して強いチームではないが、謙虚でひたむきな気持ちで戦えれば楽しみ」と梅本監督。過去最高の4強超え、そして悲願の日本一へ-。文武両道の尾道フィフティーンが一丸となって聖地に乗り込む。