貴ノ岩「なぜ誰も止めてくれない」 元日馬富士の引退「望んでいない」
大相撲の元横綱日馬富士(33)=伊勢ケ浜=が幕内貴ノ岩(27)=貴乃花=を暴行した問題で、日本相撲協会の危機管理委員会(委員長=高野利雄・元名古屋高検検事長)は20日、東京・両国国技館で開いた横綱審議委員会の臨時会合と臨時理事会で最終報告をした。19日には、事件発覚後、所在すら不明だった貴ノ岩を聴取。暴行を受ける理由がないとの趣旨の話をしていることが分かった。さらに初場所を全休しても、春場所は十両に据え置く救済措置が承認された。師匠の貴乃花親方(元横綱)への処分は先送りされ28日の臨時理事会で協議する。また、暴行現場に同席した横綱白鵬(32)=宮城野=は1カ月半、鶴竜(32)=井筒=は1カ月の無報酬となる重い懲罰を科した。
貴ノ岩は無事だった。暴行問題発覚後、行方すら不明だったが、19日午後7時から2時間、危機管理委員会から聴取を受けた。被害者側が沈黙し続け、混迷を深めた事件が一転、急展開した。
対面した高野委員長は「快方に向かっていることは間違いない。ただし『稽古をしていないので体力は落ち、体重も減っている』と言っていた」と現状を語った。
最終報告は生々しかった。元日馬富士が横綱への態度に激高。リモコンなどで殴打され頭部から流血した。報告書によると、貴ノ岩は「自分への説教が終わった後、白鵬関と日馬富士関が別の話をしていた際、スマートフォンで受信したメッセージを返信したに過ぎず、特に礼を失する行為をしたわけではなく、暴行を受けて傷害を負わされる理由は全くない」との趣旨の話をしたという。元日馬富士の「謝罪しようとせず、にらみつけるような表情をしたと思った」との説明との食い違いが浮かび上がった。
そして、貴ノ岩の「どうしてこのような仕打ちをするのか理解できなかった。その場にいた者がもっと早く制止してくれればいいのに、なぜ誰も止めてくれないのか」と心情が明かされた。
翌日の秋巡業で謝罪したが納得はしていなかった。元日馬富士の検察処分にも影響する被害感情に関しては知人らの前で一方的に殴られ「恥ずかしかった」と理不尽さを感じている。一方、元日馬富士の引退には「自分はそれを望んでいたわけではない」と、複雑な心境も吐露した。
診断書を提出せず冬巡業を全休したことに批判の声もあったが、あくまで被害者。危機管理部長の鏡山親方(元関脇多賀竜)は「入院中」であるとし、特例で救済措置が取られることになった。
初場所(来年1月14日初日、両国国技館)の番付は十両まで下がるが全休してもその次の春場所は十両の最下位にとどまることが理事会で承認された。