登坂絵莉 強行出場のち号泣棄権 初戦辛勝も…栄強化本部長が“タオル”投入
「レスリング・全日本選手権」(22日、東京・駒沢体育館)
男女計10階級の決勝などが行われた。リオデジャネイロ五輪女子48キロ級金メダルの登坂絵莉(24)=東新住建=が左膝じん帯損傷などのけがを抱えながら50キロ級に強行出場したが、初戦の準々決勝を突破後、23日の準決勝を棄権することが決まった。男子フリースタイル97キロ級は山口剛(ブシロード)が2年ぶり5度目の制覇。同74キロ級は世界選手権70キロ級銅メダルの藤波勇飛(山梨学院大)が初優勝し、79キロ級は高谷惣亮(ALSOK)が74キロ級を含めて7年連続で日本一となった。
毅然(きぜん)としていた五輪女王の表情が突然崩れた。左足を引きずりながら初戦を辛勝した登坂は、翌日に向けた意気込みを報道陣に語っていたが、横で聞いていた日本協会の栄和人強化本部長(57)が「棄権しよう」と“タオル”を投入。「はい…すいません」。うなずいたものの、悔しさをこらえきれず声を上げて泣いた。
つらい1年だった。痛みを抱えていた左足親指付近を1月に手術。9月の復帰戦を優勝で飾ったが、直後の10月の合宿中に今度は左膝と左足首のじん帯を損傷し、全治約3カ月と診断。休養している間には、同階級で18歳の須崎優衣(安部学院高)が世界選手権を制覇。東京五輪に向けた代表争いが激化する中、「新ルールになったし、試合に出ていないと感覚が鈍る」と今大会に強行出場した。
栄氏は「このままだと再発するかもしれない」と案じ、「私が棄権を判断した。苦渋の選択だが、来年に向けてしっかり治した方がいい」と説明した。この悔しさを輝きに変える舞台は、必ず訪れる。