【2017年スポーツ10大ニュース】桐生、日本人初9秒台

 日本陸上界の悲願だった100メートル9秒台がついに成就し、19年ぶりに日本出身横綱が誕生、五輪金メダリストが世界ベルトをも手にした。五輪競技を戦う選手たちの躍進もめざましかった。華やかな話題の一方で、一時代を築いた女性アスリートたちが一線を退く決意をした。土俵外では思わぬバトルも…。悲喜こもごも、数多くのドラマが生まれた2017年。デイリースポーツが選ぶ10大ニュースとともに振り返ります。

 【(1)桐生、日本人初9秒台】

 日本人の悲願がついに成し遂げられた。日本学生対校選手権の男子100メートルで、桐生祥秀(22)=東洋大=が日本人初の9秒台となる9秒98(追い風1.8メートル)を記録。98年のバンコクアジア大会で伊東浩司が10秒00をマークして以来、約19年立ちはだかってきた“10秒00の壁”が、打ち破られた瞬間だった。

 誰よりもこの壁に立ち向かってきたのが、桐生だった。13年に高校生で日本歴代2位となる10秒01をマークして以来4年間、常に期待と重圧を背負いながら走り、阻まれてきた。大学最後の個人レースでの大仕事。桐生は「自分が笑顔で周りが泣いてくれている。それが一番うれしい」と、歓喜に浸った。

 この4年、桐生に触発され、直後に10秒00を記録した山県亮太、日本選手権を制した18歳のサニブラウン・ハキームに、ケンブリッジ飛鳥、多田修平と9秒台を狙える選手が多数出現した。リレーでは世界大会2大会連続でメダルを獲得。そして9月9日に生まれた9秒台で、日本スプリント界は、新たな時代に突入した。

 【(2)真央が藍が伊達が…引退】

 国民に勇気と希望を与えてきた銀盤のヒロインが、ついに競技人生に終止符を打った。フィギュアスケート元世界女王の浅田真央(27)が4月に自身のホームページで現役引退を発表。14年ソチ五輪後、1年間の休養を経て競技に復帰したが、2シーズン苦しい成績が続いた。2日後に行われた引退会見では「全部出し切った」と話し、「笑顔で前に進んでいきたいと思います」と涙をぬぐい、“真央スマイル”で第2の人生を歩み始めた。

 ゴルフ界のヒロインも選手生活に別れを告げた。宮里藍(32)は5月に今季限りでの引退を表明。会見では「モチベーションの維持が難しくなった。それは理想としている自分の姿ではなかった」と、感極まった。現役最後の大会となった9月のエビアン選手権は32位で終え、万感の涙を流した。

 テニス界の“レジェンド”伊達公子(47)は、9月のジャパン女子オープンで08年からの2度目の現役生活にピリオドを打った。日本のスポーツ界をけん引した偉大な女性アスリートが、人生の岐路を迎えた1年だった。

 【(3)稀勢19年ぶり日本出身横綱】

 大相撲の稀勢の里(31)=田子ノ浦=が1月の初場所で初優勝を果たし、1998年の三代目若乃花以来、19年ぶりに日本出身横綱が誕生した。3月の春場所では13日目に左上腕部を負傷しながら強行出場し、1差で追っていた大関照ノ富士を千秋楽の本割、優勝決定戦ともに下して奇跡の逆転優勝。日本中が歓喜に沸いた。

 ただ、このけがが影響し、5月の夏場所以降4場所連続休場。来年初場所にも進退が懸かる状況だ。

 また稀勢の里の昇進で17年ぶりに「4横綱時代」となったが、暴行問題を起こした日馬富士が11月に引退し、わずか5場所で終焉(しゅうえん)。4横綱がそろって土俵に上がったのは11日間だけだった。

 【(4)村田日本人初メダリスト王者】

 新王者は泣き顔で右拳を突き上げた。「ありがとう!」と叫び、男泣きに泣いた。ロンドン五輪金メダリストの村田諒太(31)=帝拳=が10月、WBA世界ミドル級王者アッサン・エンダム(フランス)を7回終了TKOで撃破。日本選手初となる五輪メダリストの世界王者が誕生した。

 因縁の再戦だった。エンダムとは5月の王座決定戦で拳を交え、4回にダウンを奪うなど優位に試合を進めたかと思われたが、結果は1-2の判定負け。国内外で“疑惑の判定”と物議を醸した。それだけに、万感の思いで手にした世界王座のベルトを前に、抑え切れぬ感情が爆発した。

 米国進出、3団体統一ミドル級王者ゴロフキンとの激突-。2018年、村田の新たなステージが始まる。

 【(5)ハリル日本W杯決定】

 バヒド・ハリルホジッチ監督(65)が率いるサッカー日本代表が、6大会連続のW杯出場を決めた。日本は昨年の最終予選の初戦ホーム・UAE戦で敗れ黒星発進。だが3月23日のアウェーマッチでは、MF今野(G大阪)が鬼神のごとき活躍を見せてリベンジを達成。その後もアウェー・イラク戦で引き分けるなど苦しんだが、8月31日のホーム・オーストラリア戦で2-0勝利。B組1位での突破を決め、列島に歓喜をもたらした。

 W杯切符獲得後の11月には欧州遠征でブラジル、ベルギーと対戦。ハリルホジッチ監督がFW本田、岡崎、MF香川の3人を同時に代表メンバーから外すなど、国内外で大きな議論も呼んだ。

 【(6)日馬、暴行問題で引退】

 大相撲の元横綱日馬富士(33)が平幕貴ノ岩(27)=貴乃花=を10月25日夜、鳥取市内で開かれた酒席で暴行。九州場所3日目の11月14日に発覚すると大騒動へと発展。元横綱は責任を取る形で同29日に引退した。貴ノ岩の師匠、貴乃花親方(元横綱)は暴行事件の4日後に鳥取県警に被害届を提出したが、日本相撲協会には報告せず。県警は12月11日に傷害容疑で元横綱を書類送検した。

 協会危機管理委員会は貴ノ岩を19日に、貴乃花親方を25日に聴取した。20日の臨時理事会で酒席に同席していた横綱白鵬らに処分を下した。

 【(7)松山、進撃全米OP2位】

 男子ゴルフの松山英樹(LEXUS)が日本男子の悲願、メジャー制覇にあと一歩まで迫った。6月の全米オープン選手権で青木功に並ぶ日本勢最高の2位に入り、世界ランキングも日本勢史上最高の2位に浮上。8月の全米プロ選手権では第2日に64をマークして首位に立つと、最終日は前半9ホールを単独首位でターン。5位に終わったものの、最後まで優勝争いを繰り広げた。

 大会後に今年1月に結婚し、7月に第1子が誕生していたことを発表した。

 【(8)東京五輪へニッポン旋風】

 2020年東京五輪に向けて、各競技の世界選手権で日本勢がメダルラッシュとなった。体操は女子床運動で村上茉愛(日体大)が日本女子63年ぶりの金メダルを獲得し、男子は白井健三(日体大)が2冠。一方で、男子個人総合6連覇だった内村航平(リンガーハット)は負傷で棄権し、連勝記録も「40」でストップした。

 卓球は、混合ダブルスで石川佳純(全農)吉村真晴(名古屋ダイハツ)組が優勝するなど、日本勢がメダル5個を獲得。男子シングルスでは張本智和(エリートアカデミー)が史上最年少の13歳で8強入りした。バドミントンは女子の奥原希望(日本ユニシス)がシングルスで日本勢初の金メダルを獲得し、日本勢が4個のメダルを獲得した。

 柔道は男子66キロ級の阿部一二三(日体大)を筆頭に、男女で計7個の金メダルを獲得。東京五輪から新種目となる男女混合団体戦でも初代王者になった。レスリングでは男子グレコローマンスタイル59キロ級の文田健一郎(日体大)、同フリースタイル57キロ級の高橋侑希(ALSOK)が金メダルを獲得した。

 【(9)平昌五輪組も躍進】

 来年2月の平昌五輪で、日本勢大躍進の予感が漂っている。期待が高まるのがスピードスケート。今月のW杯では小平奈緒(相沢病院)が女子1000メートルで世界記録を更新、高木美帆(日体大職)らの女子団体追い抜きも世界記録を連発している。スキージャンプ女子の高梨沙羅(クラレ)は2月、男女を通じて歴代最多タイのW杯53勝目。3月には、モーグル世界選手権で堀島行真(中京大)が日本男子初の金メダルを獲得。フィギュアスケートでは羽生結弦(ANA)が世界選手権を3年ぶりに制した。

 【(10)ボルト壮絶引退】

 “人類最速の男”の伝説は壮絶なフィナーレで幕を閉じた。8月の世界選手権。同大会での引退を表明していたウサイン・ボルト(ジャマイカ)は100メートルでまさかの3位に終わると、現役最後のレースとなった400メートルリレーではバトンを受けた直後に左脚を痛め、苦もんの表情で倒れ込み、無念の棄権に終わった。

 しかし、仲間に支えられて立ち上がったボルトは、大歓声に包まれながらゴールにたどり着いた。世界を驚かせ続けた最速ジャマイカンらしい、破天荒なラストランだった。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

スポーツ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(スポーツ)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス