昨年９月のカヌー、スプリント日本選手権で飲み物に禁止薬物を混入されてドーピング検査で陽性となり、その後暫定的な資格停止処分を解除された小松正治（２５）＝愛媛県協会＝が１０日、日本代表の合宿先である石川県小松市内で取材に応じ、混入した鈴木康大（３２）＝福島県協会＝について「やってしまったことが重大なので仕方ない。今は反省をしてほしい」など心境を述べた。

　日本カヌー連盟による薬物混入問題の調査結果と処分の発表から一夜明け。報道陣に囲まれた小松の表情は終始、硬かった。「まさか日本でこういうことがあるとは思わなかった」。驚き、悲嘆、安堵（あんど）に感謝…。発せられた言葉の数々には、さまざまな感情が詰まっていた。

　６歳年上の鈴木は、カヌーを始めた頃から憧れの存在。「代表チームに入ってから仲良くしてもらって、いい先輩だった」。東京五輪に向け、男子カヤックフォア（４人乗り）で定位置を争う間柄になったが、ドーピング検査で陽性反応が出た時に真っ先に連絡し「取りあえず連盟に相談したら」と言ってくれたのも、また鈴木。だからこそ「ショックが大きかった」という。

　嫌な予感はあった。「何となく、飲み物の味が違うことがあった」。だがまさか、禁止薬物がドリンクに混入されているとは想像もしなかった。

　暫定的な資格停止処分を受けた際は、「東京（五輪）はもう無理だという絶望感があった」というほど落ち込んだ。「自白してくれなかったら資格停止処分のままだった。そこに関しては感謝したい」。一方で「今は反省をしてほしい」と、犯した罪の重さと向き合うことを望んだ。

　競技で使用する道具を盗まれたとする被害も含めて石川県警に相談しており、今後捜査が進む。今回の問題が完全に決着するまでまだまだ時間を要するが、立ち止まっているつもりはない。

　この日は室内プールで約１時間調整。３月に香川県で開かれる海外派遣選手選考会の出場を目指しており、「今年はアジア大会があるので、そこを目指して頑張りたい」。小松はしっかりと前を見据えた。