稀勢「ここから」初日4連敗がなんだ 角界の救世主よ…復活V見せてくれ!
「大相撲初場所・初日」(14日、両国国技館)
左上腕部、腰部、左足首などを負傷し4場所連続休場から再起を期す横綱稀勢の里(31)=田子ノ浦=は悔しい黒星スタートとなった。昨年初優勝と横綱昇進を決めた初場所の初日は、先場所金星を配給した新小結貴景勝(21)=貴乃花=を相手に押し込みながら土俵際、とったりを食らい、行司軍配差し違えで、鬼門の初日は4連敗を喫した。元横綱日馬富士(33)の暴力事件、立行司のセクハラなど不祥事続きの角界の救世主として期待される日本出身横綱。試練の18年が幕を開けた。
初優勝と綱とりを決め、涙したあの感動から1年。初場所の女神は18年の初日、稀勢の里にはほほ笑まなかった。
流れは完ぺきだった。突き押し自慢の21歳の若武者を正面に置き、よく見て押し合った。攻め込まれたが“伝家の宝刀”の左おっつけがさく裂した。故障前の威力が完全に戻っており、相手は反転し後退。出足一気に押し込んだが、土俵際で右腕をたぐられて崩れ落ちた。
軍配は自身に上がったが、物言い。協議の末、稀勢の里の左肘が先についているとの判定で覆り、白星を逃した。
くしくも立行司は10代行司へのセクハラで出場停止となった式守伊之助の代理を務めた式守勘太夫。その負の余波に巻き込まれたか、“立行司デビュー”が差し違えの一番になってしまった。
横綱昇進後、初日は1勝4敗。昨年3月の春場所で左上腕部を負傷して以降、鬼門となっており、これで出場4場所連続で黒星だ。
支度部屋では悔しさをかみ殺しながらも質問に応じた。「また明日、しっかりいこうと思います」。左おっつけの復調にも「まあ、またここから」とうなずいた。「あしたまたしっかり」と、その後も繰り返した。黒星時には通常、無言の横綱が口を開くのは内容を悲観していないからだ。
土俵下で見た勝負審判長の藤島審判部副部長(元大関武双山)は「力強い立ち合いをした。前に出て負けるのはいい。内容は悪くない」と評価は高かった。八角理事長(元横綱北勝海)は「苦しい場所っていうのは分かっている。もう土俵に上がっているんだから」とハッパをかけた。
4場所連続で休場。横綱審議委員会(横審)は見守る方針でいるが、今場所も途中休場なら進退を問う声が上がってもおかしくない。復活へ向け、今場所は日々、30番を超える番数を重ねた。泥にまみれ、鍛錬した若い日々に原点回帰。「いい修行。いい経験。ケガをよかったと思えるように」と、期すものは半端じゃない。
不祥事にまみれる中、それでも満員御礼の観客が詰めかけた。「やるだけです」と、稀勢の里は短い言葉に角界を背負う横綱としての責任を込めた。