張本智和 史上最年少14歳208日でV 東京五輪へ宣言「金メダルを獲りたい」
「卓球・全日本選手権」(21日、東京体育館)
日本卓球界が“張本時代”へと動き出した-。男子シングルス決勝で、中学2年の張本智和(エリートアカデミー)が、史上最多9度の優勝を誇る水谷隼(28)=木下グループ=を4-2で撃破し初優勝。14歳208日でのシングルス制覇は、男女を通じて史上最年少記録となった。女子決勝は、リオデジャネイロ五輪団体戦銅メダルの伊藤美誠(17)=スターツ=が、前回女王の平野美宇(17)=エリートアカデミー=を4-1で破り初制覇。ダブルスの女子、混合に続いて、女子では史上3人目となる3冠を達成した。
歴史的快挙を成し遂げた14歳の天才少年は、今や代名詞となった「チョレイ」という雄たけびも、背中を反るガッツポーズ「ハリバウアー」も出さない。「本当にうれしい時ほど声が出ないですね」。張本は拳を握りしめながら一目散に父・宇さんの元に駆け寄り、力強く抱き合った。そして、人さし指を突き上げながら両手でガッツポーズした。
「今まで卓球をやってきた中で最高の瞬間。これまでで1、2番のプレーができた」
決勝は憧れの水谷が相手。初対戦となった昨年の世界選手権で金星を挙げたが、大舞台で真価を証明したかった。「また攻めるプレーをすれば勝てる」と、ラリーになっても一歩も引かない。第1ゲームを先取し流れをつかむと「チョレイ!」と声を出しながらボルテージを上げていく。コートを自分色に染めながら、一度もリードを許すことなく絶対王者を撃破した。
あどけなさの残る14歳だが、少しずつ大人へと成長を遂げた。幼少期からバックハンドの技術は折り紙付きだが、シニアで活躍するにはフィジカル強化が必須。この1年はトレーナーの特別メニューを毎日吐く寸前までこなし、前まで2ケタだった体脂肪率は8・3%を計測。筋肉量も増え、体重は1年で5キロ近く増えて63キロ。さらに70キロが目標だ。
世界のトップとも戦えるフォアハンドのパワーや俊敏なフットワークが身につき、ジュニアの部に続いて2冠を達成。「今大会1番の目標だったシングルス優勝ができてうれしい」と胸を張った。
最高の舞台で憧れのエースに完勝し「これからは自分の時代」と堂々宣言。しかし、自身はまだ1度日本一になっただけ。「水谷選手みたいに10回くらい優勝できる選手になりたい」とエースの系譜を継ぐ覚悟を示した。
“張本時代”の到来を首脳陣も期待する。日本男子の倉嶋洋介監督は「張本時代に半分足を突っ込んでいる。水谷に2回勝ったのは本物の実力と言っていい」と絶賛。日本卓球協会の宮崎義仁強化本部長も「今日はまったく新しい卓球をしていた。五輪でも金メダルを獲れる卓球ですよ」と太鼓判を押した。
20年東京五輪の会場も、この日と同じ東京体育館だ。水谷とのWエース体制にも期待が高まるが、「残り2年、強い海外選手にも勝って、またここに戻ってきて金メダルを獲りたい」と力強く宣言した。