栃ノ心初Vに男泣き「最高です」遠くジョージアの妻と生後2カ月長女に捧ぐ
「大相撲初場所・14日目」(27日、両国国技館)
西前頭3枚目の栃ノ心が男泣きした。松鳳山を寄り切って自己最多13勝目を挙げ、初優勝を決めた。平幕優勝は12年夏場所の旭天鵬以来6年ぶり。30歳での優勝で、新入幕からの所要58場所は優勝制度が制定された1909年以降4番目の遅さ。春日野部屋としては72年初場所の初代栃東以来、46年ぶりの賜杯となった。ジョージア出身では初めてで、欧州出身では琴欧洲、把瑠都に続く3人目。若い頃は門限、服装規定破りの常習犯も改心し相撲道を真っすぐに歩んだ。13年に右膝を大けがし幕下下位まで降下する苦難を乗り越え、栄光をつかんだ。
インタビュー室で栃ノ心は声を詰まらせ、目を潤ませた。「最高です。うれしい。信じられない」。異国での苦難を乗り越え、つかんだ栄光。こぼれる涙を何度もぬぐった。
王手をかけて臨んだ松鳳山戦。いなされてぐらついたが踏ん張った。逆襲して四つに組んで盤石の寄り。初優勝を決めた瞬間、「よし!!」と発し、ウン、ウンとうなずいた。地鳴りのような歓声、祝福の嵐。「本当に今日の日は人生で忘れられない。最高です。相撲界に入って一番うれしい」とかみしめた。
故郷ジョージアはトップ級ニュースで連日盛り上がる。昨年11月に生まれた長女アナスタシアちゃんの成長を毎日テレビ電話で見守った。愛妻ニノさんと話す時は緊張を忘れさせてくれた。まだその腕に抱いていない我が子に優勝を捧げた。
17歳の時、サンボの欧州王者に君臨。角界入り後、格闘センスと怪力で番付を上げていった。ハリウッド俳優のニコラス・ケイジ似のイケメン。順風な相撲人生は挫折があった。
やんちゃだった20代半ば。門限や服装規定を破ることもたびたびだった。11年10月、師匠の春日野親方(元関脇栃乃和歌)から鉄拳制裁。腹、背中をゴルフクラブのアイアンのグリップで殴られた。もちろん、大問題になった。部屋を飛び出し、2日間“家出”したが、非は自身にあることは分かっていた。以降は改心し、相撲と真剣に向き合った。
幕内に定着した13年名古屋場所で右膝前十字靱帯(じんたい)断裂、右膝内側側副靱帯断裂の大ケガ。手術し、入院し、3カ月半、稽古場に立てなかった。「辞めよう」と何度も引退を考えた。救ったのが師匠。「あと10年やるんだ!!」との言葉に熱くなった。
どん底から4年。「これまでいっぱい注意された。できるのはこれくらいしかない」と最高の恩返しをした。46年ぶりに春日野部屋に賜杯をもたらした師弟は、部屋に戻ると抱き合って歓喜。場所中に過去の傷害事件が発覚し、揺れた部屋の名誉を回復した。