松田瑞生、初マラソンV “浪速のみずき”いきなり日本歴代9位の記録
「大阪国際女子マラソン」(28日、ヤンマースタジアム長居発着)
“腹筋女王”が20年東京五輪候補に躍り出た。マラソン初挑戦の松田瑞生(22)=ダイハツ=が日本歴代9位、初マラソン日本歴代3位の2時間22分44秒で初優勝し、19年9月以降に開催予定の東京五輪代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」出場権を獲得した。昨夏の北海道マラソンを制し、MGC出場権を持つ前田穂南(21)=天満屋が2時間23分48秒で2位。3位には2時間27分37秒で安藤友香(23)=スズキ浜松AC=が入り、新たにMGC出場資格を得た。
レース終盤に舞った雪が新たなヒロインの誕生を演出した。両腕を突き上げ、優勝のゴールテープを切った松田は「大阪の地で輝けて良かった」と笑顔をはじけさせた。25キロ過ぎに大阪薫英女学院高の1年後輩でもある前田が約60メートル抜け出したが「何でこんな早く出て行くんやろ。大丈夫かな」と焦らず背中を追った。「後半に強いと自負している」という言葉通り、31キロ手前で前田を捕らえると、一気に抜き去り一人旅で浪速路を駆け抜けた。
鍛え抜かれた腹筋から“腹筋女王”の異名を持つが、幼少期は病との闘いを経験した。母明美さん(52)によると3歳で腎盂(じんう)炎と診断され、治療のため10年近く食事制限が続いたという。
鍼灸(しんきゅう)師でもある母は、松田の中学時代から欠かさず付き添って愛娘にはり治療を施した。昨夏のロンドン世界選手権にも同行。今回もレース前々日に治療を行った際には、いつも以上に肩の力が抜けていたため「いけると思った」と勝利を確信した。寒さが苦手な松田のため、前日にはおきゅうを施し支え続けた。松田は「自分の親は世界一。自慢できるし心の支え。これからも恩返ししていきたい」と感謝言葉を並べた。
天真爛漫(らんまん)な言動が持ち味の浪速っ子だが、19キロ過ぎには給水に失敗した安藤に対して「後半きつくなると思った。正々堂々と戦いたい」と給水ボトルを差し出す一面も持ち合わせる。高校時代の恩師でもある安田功監督によると、高校の練習だけでは物足りず、夜には近所のジムに通って体を鍛え続けた努力家でもあるという。
初マラソンとは思えぬ快走に、日本陸連の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは「野口に似ている。跳ばずに前に行く走りはマラソンにうってつけ」と、アテネ五輪金メダルの野口みずきを引き合いに出し、野口の持つ日本記録2時間19分12秒を「切る力がある」と“浪速のみずき”を絶賛した。
大阪市立遠里小野(おりおの)小学校6年時、創立70周年記念行事で埋めたタイムカプセルには10年後の自分に向けて『マラソンでオリンピックに行く夢はかなっていますか』と書いた。東京五輪の有力候補に躍り出た松田が、夢のスタートラインに立った。