設楽16年ぶり日本新!練習30キロ以上走らず…瀬古リーダー驚く“新人類”が快挙
「東京マラソン」(25日、都庁前~東京駅前)
20年東京五輪代表選考会「グランドチャンピオンシップ(GC)」(19年秋以降開催)の出場権と、8月のジャカルタ・アジア大会代表選考会を兼ねて行われ、男子でハーフマラソン日本記録保持者の設楽悠太(26)=ホンダ=が日本新記録となる2時間6分11秒で日本勢最高の2位に入った。02年に高岡寿成がマークした2時間6分16秒の記録を16年ぶりに更新した。井上大仁(25)=MHPS=が日本歴代4位の2時間6分54秒で5位。ディクソン・チュンバ(ケニア)が4大会ぶりに優勝した。
最終コーナーを曲がった瞬間、設楽悠は16年ぶりの日本記録更新を確信した。ゴール直前に右腕を挙げ、人さし指を突き上げた。
「特に記録は意識せず、自然に走ることで結果がついてくると思った。沿道から『日本記録』『(日本実業団陸上競技連合からの報奨金)1億円』と聞こえてきたが、大事なのは自分のレースをして勝つこと」。16年止まっていた日本男子マラソン界の時計の針を動かしたのは、無欲な26歳だった。
昨年は後半に失速したが、今回も前半から海外勢を追い、先頭集団で勝機をうかがった。38キロ過ぎに井上を抜いて日本人トップに立つと、その勢いでアフリカ勢2人を抜き去り2位に入った。
時代を変えるのはいつだって“異端児”だ。マラソン練習では40キロ走を行うのが常識だが、30キロ以上は走らない。「僕は必要ないと思っている。今の日本選手は走り込みが足りないとよく言われるが、今はそういう時代じゃない。いいシューズを選び、効率よく練習をすることが結果を出す近道」。大胆不敵なニュースターは、日本陸連の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーに「僕らの常識では計り知れない、新人類」と言わしめた。
連戦にも自己流調整だ。年明けからは全日本実業団駅伝を皮切りに毎週のように大会に出場。「土日に試合がないと僕はサボっちゃう。結果を残せているのは試合に出ているから」。どこまで本気なのか分からないトーンで淡々と話すものの、結果として“設楽流”の正しさを証明した。
折しもメダルラッシュに沸いた平昌五輪が閉幕。前夜はスピードスケート女子マススタートで優勝した高木菜那の姿をテレビ観戦し「日本人で金メダル2つはすごい。競技は違うが、僕も負けないくらい結果を出したい」と刺激を受けた。次は2年後の夏。日本男子マラソン界期待の星が希望をつなぐ。