高木美帆、総合V 日本勢初の戴冠 オランダで大喝采「ずっと記憶に残る」
「スピードスケート・世界選手権」(10日、アムステルダム)
高木美帆(23)=日体大助手=が世界選手権で男女を通じ日本勢初となる総合優勝を果たした。男子を含め、欧米勢以外の総合優勝は初。日本はこれまで女子の橋本聖子、男子の白幡圭史の2位が最高だった。500メートル、3000メートルを滑った9日に首位発進。2レースともイレイン・ブスト(オランダ)と同走した10日は1500メートルで0秒07差の1位、11秒61のリードで迎えた最終5000メートルは3秒08差の4位と踏ん張った。菊池彩花(富士急)は総合7位だった。
1928年アムステルダム五輪のメイン会場だった屋外スタジアムの特設リンク。地元のエース、ブストの逆転劇を期待した大観衆の熱狂は、東洋の新女王への喝采に変わっていった。11秒61のリードで最終の5000メートルに臨んだ高木美は、強敵の背中が「意外と近いな」と序盤で歴史的な戴冠を確信した。3種目目までのリードを悠々と守り、欧米以外の選手で初めて「クイーン・オブ・スケート」の称号を手にした。
前日からの4レースで、主導権を一度も譲らなかった。第2日最初の1500メートルも闘志をむき出しに1位。同走のブストを最初の300メートルで0秒33リードしたが、1周ごとに差を0秒19、0秒15と縮められ、同じ展開で逆転された昨年の苦い記憶が頭をよぎった。「絶対に脚を止めない」。気温が上がって氷が緩み、進みづらい中でスパート。互いにスケート靴を突き出した接戦を、わずか0秒07差で制した。
昨年、9秒28の大差で敗れた5000メートルも食い下がった。大敗しなければよい状況で、まずは「省エネでリズムを刻むことだけ考えた」と落ち着いて入り33秒台、34秒台、34秒台と、相手と同じラップタイムを重ねた。「これはいける。あとは転ばないことだけ」。完勝だった。
照明を落とし、ステージだけが照らされた表彰式。オランダ勢を両脇に従えて、真ん中でほほ笑んだ。今大会を含めて3年連続1位の500メートルに加え、過去2年は太刀打ちできなかった中長距離種目の急成長で、本場では五輪に引けを取らない価値のあるタイトルを約2万5千人の大観衆の前でつかんだ。「ずっと記憶に残ると思う」。高木美の時代が華やかに幕を開けた。