鶴竜 一人横綱の重圧も握れぬ右手も乗り越え不屈のV 優勝決定の瞬間会場にため息

 「大相撲春場所・14日目」(24日、エディオンアリーナ大阪)

 横綱鶴竜(32)=井筒=が大関豪栄道をはたき込んで13勝1敗とし、8場所ぶり4度目の優勝を決めた。白鵬、稀勢の里が休場し、一人横綱で臨んだ今場所。右手の指に痛みを抱えながらも優勝争いを引っ張り、最高位の責任を果たした。豪栄道は5敗目。大関高安は関脇御嶽海を突き落として11勝目。御嶽海は関脇昇進後初の負け越しが決まった。先場所優勝の関脇栃ノ心と小結逸ノ城は9勝目。平幕の魁聖、勢は勝って11勝3敗とした。

 不格好だったかもしれない。それでも、一人横綱の意地で土俵際、右足1本で踏ん張った。前回優勝した2016年九州場所14日目と同じ、豪栄道との結び一番。押し込んできたご当所大関を、はたき込んだ決着の直後は土俵下で尻もち。なりふり構わず、8場所ぶり優勝を決めた。

 「チャレンジを決めた気持ちが正解だった。あきらめなくてよかった」

 5場所連続休場明けの先場所は、11勝で進退問題をクリアしたが終盤に失速し、優勝争いから脱落。千秋楽で右手中指などを負傷した。春場所休場が何度も頭をよぎる中、白鵬と稀勢の里の2横綱が先に、休場を表明。3横綱全員が初日から休場すれば、昭和以降で初という事態に「やっていくうちに良くなると期待して」と見切り発車で強行出場した。

 右手では、拳も握れない状態で踏み出した今場所。結局、右前まわしを取った万全の相撲は、数えるほどしかなかった。

 感極まった表情の取組後も、相撲内容を問われると思わず苦笑い。綱渡りの連続だったが、八角理事長(元横綱北勝海)の「よくやった。けがで苦労して、一人横綱で。苦労したかいがあった。よくやったよ」のねぎらいの言葉が、すべてを物語った。

 優勝決定の直後の館内を満たしたのは、拍手ではなくため息。横綱本人も不本意だったに違いない。「来場所もその次も、という気持ち」と珍しく語気を強めた。4度目の優勝が心に火を付けたのは間違いない。

 場所の序盤、しこ名にもなっている鶴の話題になると「(出身地の)スフバートルにも鶴が来る季節ですね」。V宣言かと思いきや、数日後には「どうも夏みたいですね」と丁寧に訂正。それでも、春は鶴竜の季節。胸を張って賜杯を受け取る。

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