レスリング協会、勇み足の否定声明 パワハラ認識甘く…第三者委「つかみ合っているのは互いの魂」
日本レスリング協会は6日、都内で緊急理事会を開催し、レスリング女子で五輪4連覇を達成した伊調馨(33)=ALSOK=が同協会の栄和人強化本部長(57)からパワーハラスメントを受けていたという告発状が内閣府に提出された問題で、調査を委託していた第三者委員会からの報告で4点のパワハラ行為が認定されたことを受けて、福田会長ら幹部が謝罪した。「伊調選手、関係コーチ、その他の関係者の皆さまに、この場を借りて深くお詫び申し上げます」と、頭を下げた。また、同日付で栄強化本部長から、谷岡副会長を通じて辞表が提出され、理事会はこれを受理した。栄本部長は「自分の不徳の致すところ」と話しているという。
同協会は問題発覚直後の3月1日に、パワハラや圧力を全否定する声明を発表していた。しかし、一転して謝罪する事態に追い込まれ、福田会長は「パッと(報道を)読んで、感触そのものを言ってしまった。申し訳なかったと思う。しっかりと改革をしていかないといけない」と、平謝りするしかなかった。
確かに告発状に記載されていたとされる男子合宿や警視庁の練習場への出入り禁止、練習場確保の妨害は認定されなかったが、調査前の全否定は、完全な勇み足。倫理委員会に所属する弁護士も「(否定声明は)時期尚早で拙速だった」と指摘。福田会長は「どこからどこまでがパワハラなのか、認識を改めないと」と、うつむいた。
第三者委員会の報告書では、レスリングの競技特性について「レスリングは対人競技であり、しかも柔道や相撲などと異なり、競技相手との対戦において、柔道着やまわしのような相手を掴まえるものがない。強いていえば、レスリングにおいて互いに掴み合っているのは互いの魂」と見解を示し、「レスリング競技に関わる人々が常に心すべきは相手に対する『敬意と思いやり』である」と、協会側を諭した。
国民栄誉賞を2人も生んだ日本スポーツ界の看板競技。国民的議論を呼んだ大騒動の果てに生まれ変われるか。