柔道新ルールは「受け」も重要 「有効」レベルが「技あり」に…思わぬ結果も

 高校野球の今春センバツ大会から延長タイブレークが導入されるなど、スポーツとルール変更は切っても切れない関係にある。日本のお家芸である柔道でも、2020年東京五輪に向けて、国際柔道連盟(IJF)がルールの改正を行った。16年リオデジャネイロ五輪以降の大きな変更点としては、「有効」の廃止、指導差だけでは試合の決着をつけないなど、より攻撃的でわかりやすい柔道を志向するものだ。17年1月、今年1月と2度の改正を経て「一本」による決着が増加する傾向にある一方、指導3つの「反則負け」のリスクも高まっている。今一度このルールの特徴を検証してみたい。

 誰が見ても分かりやすく攻撃的な柔道を-。今回のルール改正の背景には、柔道が持つダイナミックな魅力をより高めようとするIJFの意図がある。

 攻撃だけでなく、従来以上に重要になるのが、受け=相手の技でポイントを取られない防御力だ。その背景には、新ルールの「広すぎる『技あり』の定義」問題がある。

 リオ五輪までの技のポイントは「一本」「技あり」「有効」の3段階だったが、区別がつきづらいとの観点から「有効」を廃止。事実上「一本」以外は「技あり」に統合された。やっかいなのが、17年ルールで廃止された「合わせ技一本」の復活だ。従来の「有効」レベルの技も「技あり」となるため、レベルの低い技2つでも「一本」となってしまう。

 顕著な例が、2月のGSパリ大会女子57キロ級決勝の芳田司(コマツ)と出口クリスタ(カナダ)の試合だ。序盤に芳田は内股透かしを食らい、体の側面をついて「技あり」を取られた。すぐに「技あり」を取り返したが、今度は大外刈りで「技あり」を奪われ、合わせ技一本で敗れた。

 この時、芳田は横向きではあるもののうつぶせに近い形で倒れており、従来であれば「有効」にも満たないような形だったため、判定に立ち尽くした。「以前の『有効』にもならないような技だったが、きちんと(感覚を)体に染みつかせておけば今後対処できる」と、以降は受けの練習に励んでいるという。

 以前の「有効」であれば、何回食らっても「一本」にはならなかったが、今はリスクが高まった。男子の井上監督は「これまで以上に受けができない選手は勝てない。このルールであらためて感じた」と警戒心を強めている。

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